【読書亡羊】ウクライナの奮闘が台湾を救う理由とは  謝長廷『台湾「駐日大使」秘話』(産経新聞出版)|梶原麻衣子

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


正式な国交のない日本において、日本との関係を構築し、中国とも渡り合わなければならない台湾外交関係者の苦労は想像を超えるものであるに違いない。

中国との「情報戦」については、2018年に台風21号の被害に見舞われた際の顛末についてのみ記されている。

冠水した関西国際空港で台湾人旅行客が足止めされた際に、一部の台湾人が途中から中国側のバスに乗り込んで中国当局に謝意を示したことで、台湾では大騒動になった。

中国は「台湾人が祖国に感謝」と報じ、台湾でも「中国がバスを出して国民を救ったのに、台湾代表処は何もしなかった」との書き込みが拡散され、何と台湾の外交関係者が自死するに至ったのである。

情報戦によって、ちょっとした勘違いから始まったことが死者を出す事態にまで発展したという衝撃的な顛末だ。だが2025年現在、日本を舞台に台湾と中国が情報戦で競り合っている状況は、死者こそ出ないものの激化の一途をたどっているに違いない。

本書刊行時点ではまだ書けない台湾と中国との間の、日本を舞台にした応酬が他にもあるのではないかと思う。8年分の回顧録の一部を編集した本書に続いて、いつか明かせる日が来たら、そうした外交の舞台裏を余すところなく「回顧」してもらいたい。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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