【役割責任 role】地位・役職に結びついている義務を負う責任
性暴力は業務の延長線上であったことから、フジテレビは組織として性的な接待に関与していたのであり、最終的な役割責任は、組織の管理者である経営者と経営者の人事を握る存在にあります。
【因果責任 causal】結果に対する原因を作ったことへの責任
「セクハラに寛容な企業体質」を醸成した関係者には因果責任があります。
【負担責任 liability】自らの行動に対する法的・道徳的責任
フジテレビが性的トラブルという道徳に違反する行為を認知していながら中居氏を番組に起用し続けた関係者には、負担責任があります。
【能力責任 capacity】負担責任に対応する能力を発揮する責任
人権DDを中心原理とするコンプライアンス担当部署を機能させなかった経営者には能力責任があります。
これらは、『月刊Hanada』4月号で指摘した通りです。フジテレビには弁解の余地がありません。
しかしながら、このような機会に乗じて、事実に基づく妥当な批判とは思えないコメントが『サンデーモーニング』で飛び出しました。
谷口真由美氏:中居氏に対しても、これまた彼がジャニーズの中の性暴力の被害者だったんじゃないかということを考えると、少年の頃からこの業界に身を置いて、彼が更生するキッカケがなかったということは、業界全体としても考えなければいけないことだと思う。
なので、引退したから終わりではなく、彼で稼いだ企業の人たちは、やっぱり中居さんという人が更生して行く道も、救済として考えないといけない。
被害者に寄り添ってきた人がなぜ……
谷口氏が何を主張しているのか、論理が支離滅裂でまったく不明です。
まず、中居氏をジャニーズ性暴力の被害者とする個人的憶測を前提とするのは、仮にそうであっても、そうでなくても、中居氏に対する人権侵害であると考えられます。というのも、そうである場合には性暴力の二次加害、そうでない場合には誹謗中傷にあたるからです。
次に、「彼が更生する」という言葉です。仮に中居氏が少年期に性加害を受けていたとして、中居氏には何の罪もなく、そのことで更生する必要もありません。「性加害を受けた人物に罪がある」とするのであれば、それは二次加害に他なりません。
さらに、その更生の責任を業界が負わなければならないと考えるのも突拍子もない発言です。なぜ全責任を取って引退した人物を、更生が必要な人物と認定して、業界が更生させなければならないとするのは、本当に意味不明です。