【大川原化工機冤罪事件】「警視庁公安部は絶対に許さない!」 大川原正明社長インタビュー|粟野仁雄

【大川原化工機冤罪事件】「警視庁公安部は絶対に許さない!」 大川原正明社長インタビュー|粟野仁雄

軍事転用可能な機械を不正・無許可で輸出したとして、警視庁公安部に逮捕・起訴され、その後、起訴を取り消された「大川原化工機」の社長らが国と都を訴えた裁判で、2023年12月27日、東京地裁が警視庁の逮捕、東京地検の起訴を違法と認め、都と国に計約1億6千万円の賠償を命じた判決を下した。弊誌2023年9月号に掲載された、大川原正明社長の独占インタビューを特別公開!


――さきほど、「偽証」という話が出ました。安積警部補など、まさに偽証でしょう。偽証罪が形骸化している日本で最も偽証をするのが、警官ですね。
大川原 証言が事実と違っていたことが判明しても、「勘違いでした」とか「記憶違いでした」とか言えば偽証罪にはならない。また、取調は密室ですから証明することが難しいですね。米国で偽証罪が機能しているのは、取調段階から弁護士が同席しているからです。このあたりも、日本が変えていかなくてはならないのでは。

――三月には防衛医科大学の四ノ宮先生が、安積警部補の捏造を暴露した意見陳述書を裁判所に提出しました。科学者としての正義感ですね。
大川原 そのとおりです。私が法廷で感謝を述べましたとおり、四ノ宮先生には本当に感謝しています。

四ノ宮さんの発言を「熱風を吹き込めば装置内が百・以上になる」 「乾熱で大腸菌などを殺菌できるのであれば輸出規制に該当する」などと言ったかのように安積警部補が捏造して捜査報告書や供述調書を作った経緯を、しっかりと記した素晴らしい陳述書を出してくださいました。

国立大学校のトップとしては勇気のいることでしょう。嬉しかったですね。それに比べて、警視庁の側に立っていた千葉大学や岐阜大学の若い学者らは悲しいですね。

――公安警察は事件を創り、大きく報道させることで手柄にします。今回の事件に関する報道について言いたいことは。
大川原 正直言うと、逮捕・勾留されたことよりも報道が衝撃でした。影響が大きく、父(嘉平氏)が大川原製作所から独立し、1980年に創業した会社の信用は地に落ちました。逮捕報道で銀行取引もストップ、約30億円の売り上げは4割も落ちました。社員も連日、東京に通わされて取り調べを受け、仕事どころじゃありません。 

社員は富士宮市の施設で反証実験を重ねましたが、熱風ヒーターでは警察主張のように全部位の温度が百度以上になることなどなかった。 

最大の犠牲者は、やはり相嶋さんでした。勾留された島田さんも私も大変でしたが、その間の会社の留守部隊も対応に追われている。逮捕報道で、島田さんのご子息は結婚式も挙げられなかったのです。

新聞やテレビなどは、警視庁の発表どおりに報じるだけでした。噴霧乾燥機を扱っている会社はうちだけではありません。他にもあります。少しはそういう所を取材して、本当に違法なのかを調べたりしたのでしょうか。



あわの・まさお

1956年兵庫県生まれ。ジャーナリスト。大阪大学文学部卒。ミノルタカメラ、共同通信社を経て、フリー。阪神・淡路大震災以来、中越・中越沖地震、三宅島噴火、東海村臨界事故など、災害取材の豊富な経験がある。著書に『「この人、痴漢」と言われたら』(中央公論新社)『警察の犯罪』(ワック)『ナホトカ号重油事故』(社会評論社、共著)『サハリンに残されて』(三一書房)ほか、神戸市在住。

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