重大な欠陥
支持率低迷にあえぐ岸田政権だが、この1年で最も支持率が高かったのは5月に岸田総理の地元広島においてG7サミットを開いたときだった。世界の首脳を集めて原爆資料館、平和記念公園を訪れ、リーダーシップを強く国民に印象付けることに成功した瞬間だった。さらにはウクライナのゼレンスキー大統領の来日も実現し、サプライズ効果もあって、外交の岸田という演出効果があったことが当時の支持率アップにつながったことは間違いないだろう。岸田総理自身も様々な外交成果を確信していることだろうが、実は、中国の人権問題に取り組んでいるものとしては決して見逃せない課題があった。
それは取りまとめられた「G7広島首脳コミュニケ」のある部分についてだ。外務省ホームページに原文と仮訳があるので、全文確認できる。日本語仮訳で39ページ、66項目まである文書だが、問題は<地域情勢>と題されているカテゴリーにある51番目の項目のところだ。
51項目は「我々は、G7のパートナーとして、それぞれの中国との関係を支える以下の要素について結束する」として、9点を列記している。その9点の内の7番目には、次のように記されている。
「我々は、強制労働が我々にとって大きな懸念事項となっているチベットや新疆ウイグルにおけるものを含め、中国の人権状況について懸念を表明し続ける。我々は、中国に対し、香港における権利、自由及び高度な自治権を規定する英中共同声明及び基本法の下での自らのコミットメントを果たすよう求める」
一見すると良い内容が盛り込まれていると見えるのだが、重大な欠落がある。チベット、ウイグル、香港しか書かれていない。つまり、南モンゴルがすっぽり抜け落ちているのだ。