迫り来る北朝鮮の核脅威を直視せよ|西岡力

迫り来る北朝鮮の核脅威を直視せよ|西岡力

我が国ではほとんど取り上げられないが、朝鮮半島で核をめぐる軍事緊張が急速に高まっている。この目の前の脅威をなぜ我が国が直視しないのか。


我が国ではほとんど取り上げられないが、朝鮮半島で核をめぐる軍事緊張が急速に高まっている。北朝鮮が米国と韓国、日本への核攻撃を想定した演習を続け、それに対して日米韓が北朝鮮を牽制する軍事演習を繰り返している。それを受けて韓国内では、米国の核の傘への信頼が薄れ、独自核武装論が台頭している。

Getty logo

相次ぐ米韓標的の核攻撃演習

北朝鮮は2月18日に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射し、「人民軍ミサイル総局大陸間弾道ミサイル運用部隊の発射演習」と発表した。昨年11月の同「火星17」発射は「国防科学院の試射」とされ、まだ開発段階だったが、「運用部隊の発射演習」とされた火星15は既に実戦配備されている。つまり米国を標的にした核攻撃演習だったのだ。

19日、米空軍の戦略爆撃機B1BとF16戦闘機が、日本海上空で航空自衛隊F15と、韓国防空識別圏内で韓国空軍のF35A、F15K戦闘機と、それぞれ合同演習を行った。

20日、北朝鮮は短距離弾道ミサイルを日本海へ向けて発射し「戦術核運用部隊の発射演習」だったと公表した。つまり、韓国への核攻撃演習を公然と行ったのだ。同日、金正恩朝鮮労働党総書記の妹で事実上の北朝鮮ナンバー2である金与正党副部長が、火星15は大気圏再突入に失敗したとする韓国の専門家らの主張を激しい言葉で罵り、「もし弾頭の大気圏再突入が失敗したなら、着弾瞬間まで弾頭の信号を受信できなくなる」として、成功を強調した。

22日には米国防総省で、北朝鮮の核使用を想定した米韓合同の机上演習が実施された。米国による核報復の演習だ。同日、日本海では日米韓のイージス艦が弾道ミサイル対処共同訓練を行った。イージス艦は北朝鮮の核ミサイルを迎撃する能力を持つ。日本からは護衛艦あたご、米国からは駆逐艦バリー、韓国からは駆逐艦セジョン・デワンが参加した。

23日、北朝鮮が今度は巡航ミサイルを発射し、「核抑止力の重要構成部分の一つである戦略巡航ミサイル部隊による共和国核戦闘武力の臨戦訓練」であると公表した。

韓国で強まる独自核武装論

関連する投稿


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

ウクライナ戦争が引き起こす大規模な地殻変動の可能性。報じられない「ロシアの民族問題というマグマ」が一気に吹き出した時、“選挙圧勝”のプーチンはそれを力でねじ伏せることができるだろうか。


ナワリヌイの死、トランプ「謎の投稿」を解読【ほぼトラ通信2】|石井陽子

ナワリヌイの死、トランプ「謎の投稿」を解読【ほぼトラ通信2】|石井陽子

「ナワリヌイはプーチンによって暗殺された」――誰もが即座に思い、世界中で非難の声があがったが、次期米大統領最有力者のあの男は違った。日本では報じられない米大統領選の深層!


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


【スクープ!】自衛隊と神戸市が交わした驚きの文書を発見! 自衛隊を縛る「昭和の亡霊」とは……|小笠原理恵

【スクープ!】自衛隊と神戸市が交わした驚きの文書を発見! 自衛隊を縛る「昭和の亡霊」とは……|小笠原理恵

阪神地区で唯一の海上自衛隊の拠点、阪神基地隊。神戸市や阪神沿岸部を守る拠点であり、ミサイル防衛の観点からもなくてはならない基地である。しかし、この阪神基地隊の存在意義を覆すような驚くべき文書が神戸市で見つかった――。


最新の投稿


【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

【読書亡羊】初めて投票した時のことを覚えていますか? マイケル・ブルーター、サラ・ハリソン著『投票の政治心理学』(みすず書房)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

【今週のサンモニ】暴力を正当化し国民を分断する病的な番組|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡!京都第一赤十字病院医療事故隠蔽事件 「12人死亡」の新事実|長谷川学

正常脳を切除、禁忌の処置で死亡――なぜ耳を疑う医療事故が相次いで起きているのか。その実態から浮かびあがってきた驚くべき杜撰さと隠蔽体質。ジャーナリストの長谷川学氏が執念の取材で事件の真相を暴く。いま「白い巨塔」で何が起きているのか。


トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

トランプ前大統領暗殺未遂と政治家の命を軽視する日本のマスメディア|和田政宗

7月13日、トランプ前大統領の暗殺未遂事件が起きた。一昨年の安倍晋三元総理暗殺事件のときもそうだったが、政治家の命を軽視するような発言が日本社会において相次いでいる――。


【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

【今週のサンモニ】テロよりもトランプを警戒する「サンモニ」|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。