驚異の「極超音速兵器」に日本の技術
「極超音速兵器」は、マッハ5以上で飛翔します。弾道ミサイルに比べると、複雑な軌道を描くことができ、飛翔高度が低くレーダー探知距離が短いので、現存の防空システムによる迎撃は困難だと指摘されています。
中国では、軍需産業、国防科学技術大学(軍系大学)の他、国防7校と呼ばれる大学、中国科学院などが「極超音速兵器」の研究開発に従事しています。米国も「極超音速兵器」を開発しているが、現時点では中国に凌駕されていると聞きます。
この「極超音速兵器」開発の鍵となるのが、「スクラムジェットエンジン」と「耐熱素材」の技術です。これらの関連技術を支える日本の大学や研究機関に、中国人技術者が多数在籍していました。
なかには、日本の国立大学在籍中に日本政府の科学研究費補助金を受領し、JAXA関連施設にも出入りし、中国に帰国後は極超音速分野の新型実験装置の開発に成功した中国科学院の研究員もいました。この実験装置がJAXAの実験装置と類似しているとの指摘もあります。
北京理工大学(国防7校)副教授の専門はロケットエンジン燃焼ですが、もともと同大学の兵器発射理論・技術の修士課程に在籍した後、日本の国立大学で燃焼工学を専攻し博士となり、同大学の助教を務めました。
また、ハルビン工業大学(国防7校)教授の専門はセラミックスですが、日本の国立研究開発法人の研究員を務め、中国の国防科技イノベーショングループに所属し、多機能耐熱セラミック複合材料研究を行っています。
さらに、西北工業大学(国防7校)教授の専門は航空エンジン高温部品冷却技術ですが、日本の国立大学の研究員を務め、中国では「国防973プロジェクト」「国防基礎預研」「航空発動機預研」に従事しています。
この他にも、「極超音速兵器」に必要な「推進装置」「設計」「耐熱材料」「流体力学実験」などについて、中国科学院・力学研究所や国防7校の研究者が日本の学術機関に在籍し、帰国後に中国の大学や研究機関で極超音速関連研究に従事している事例が散見されます。
日本の大学や研究機関においては、海外人材受け入れ時のスクリーニング(身辺調査)が甘いので、日本の技術が中国の武器・装備品の性能向上を下支えしてしまっている可能性が高くなっています。
次のような法整備が必要です。
新しい法整備とスクリーニング
第1に、『国家安全保障・投資法』の制定が必要だと考えます。
現状、日本の外資規制については、『外国為替及び外国貿易法』『鉱業法』『電波法』『放送法』『日本電信電話株式会社等に関する法律』『航空法』『貨物利用運送事業法』『船舶法』の8本の法律で対応していますが、これらを統括し、『政令』によって対象分野の追加を容易にするべきです。
「外資による企業買収・合併や外国企業を買収・合併する場合のルール策定と審査体制の強化」と「安全保障貿易管理規程の整備と運用体制の強化」を行っておく必要があります。
米国では、既に人民解放軍との関係を有する中国企業への輸出規制や投資規制などを進めています。
第2に、『経済安全保障包括法』の制定も必要です。
現在の『不正競争防止法』では、日本の学術機関の研究成果が外国政府や軍に利用されることを防ぎ切れません。未だ製品化が決まっていない段階の大学での研究は殆ど「営業秘密」に指定されていない上、外国人研究者が祖国の国益に貢献する行為を「図利加害目的」(不正な利益を得る目的または損害を加える目的)とは断定できないからです。
復旦大学解放軍暗号研究共同イノベーションセンター代表を務める中国人専門家が日本の大学院で暗号技術に係る共同研究に参加した事例、イラン人研究者が日本の大学で超音速飛行体を扱う研究室に在籍した事例などがありましたが、現行法では黙認する他ないのです。
『経済安全保障包括法』では、先ず「研究申請窓口の一元化」を行い、先端技術・機微技術・戦略物資の研究を実施している学術機関・研究機関・企業を国が把握できる法的根拠を作ります。
また、学術機関・研究機関・企業が「機密にアクセスできる人材を認定」するためのスクリーニングを実施する制度も導入します。外国人ならば、入国前の査証審査時の要件とするべきです。