フェイクニュースによる高市落とし
その後、女性初の与党政調会長となり、閣僚をも歴任したが、高市さんは頑として靖國参拝を続けた。その際に発せられるコメントは常に、田原氏の言った「下品さ」からは程遠い、心はあるが隙のない言葉で組み立てられていた。そんな高市さんを、田原氏やマスメディアは何かにつけて不当に攻撃し、そのたびに高市さんは冷静に反論し続けた。
今般その高市さんを標的にしたのは、新聞でもテレビでもなく『週刊文春』(2021年3月18日号)だった。悪意ある見出しと写真使いで、高市さんが総務相時代に、NTTから高額接待を受けたかのようにミスリードしたのである。
記事をすべて読めば、高市さんが領収書のコピーまで付けて「割り勘だった」ことを説明したと分かるが、多くの人は中吊りや新聞広告の見出しだけで「高市氏も接待された」と思い込む。
続いて、Yahoo!ニュースがこの記事を転載、トップ画面で「NTT 高市元総務相らも接待」と発信した。さらに後日、NHKが、まるで接待露見後に返金したかのように切り取り報道――。
大週刊誌と公共放送、ネット企業がスクラムを組んでの「フェイクニュースによる高市落とし」だった。これでは堪ったものではない。「死ね」「犯罪者」などのメールが高市さん側に多数届いたと仄聞する。
今回の1件には、2つの「背景」が関係していると推察する。ひとつは高市さんが力を入れているNHK改革を阻止したい勢力の影響。もうひとつは、「田原事件」と同じ18年前、当時も左派が進めたがっていた「夫婦別姓」のための民法改正、これを阻む「私案」を高市さんが起草し、自民党政調に出した過去だ。
そう、高市さんは、左派が進めたい愚策を鉄壁の理論武装で粉砕できる数少ない政治家である。だからメディアは彼女をいたく嫌う。
となれば、天の邪鬼の私は、ぜひとも高市さんに本邦初の女性総理を目指してもらいたく思う。日本の悪しき「戦後」と、田原氏「18年の呪い」を完全封殺するためにも、一層の奮起を期待するところである。
(初出:月刊『Hanada』2021年5月号)
ジャーナリスト。1962年生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経験したのち独立。現在は編集・企画会社を経営するかたわら、世界中を取材し、チベット・ウイグル問題、日中関係、日本の国内政治をテーマに執筆。ネットメディア「真相深入り! 虎ノ門ニュース」、ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy Up」レギュラーコメンテーター。著書に、『「小池劇場」が日本を滅ぼす」(幻冬舎)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす―日中関係とプロパガンダ』(石平氏と共著、産経新聞出版)、『「日本国紀」の副読本 学校が教えない日本史』(百田尚樹氏と共著、産経新聞出版)、『「日本国紀」の天皇論 』(百田尚樹氏と共著、産経新聞出版)など。