瀬戸内みなみの「猫は友だち」 第1回
猫はどこにでもいる、のだけれど
猫は珍しい動物ではない。むしろどこにでもいる、ありふれた生き物である。
それなのになぜ、ひとは猫を見かけると「あっ、猫だ!」と叫び、それが昼寝をしていたりじっと座っていたりでもしようものならほぼ間違いなくスマホを取り出し、真剣に写真を撮るのであろうか……?
これは私が、日本全国に点在する「猫島」と呼ばれる島々を訪ねるたびに、いつも浮かぶ疑問である。猫島というのは、徒歩で1周できるくらい小さくて、そこに住む人の数より猫の数の方が多いような島を指すことが多い。ただはっきりした定義があるわけではなく、お天気のよい休日なんかに、ふらっと出かけて猫と遊んだり写真を撮ったりしたいなーと思ったときに思い浮かべるような島を、おもにネット住民が勝手にそう呼んでいるだけのことである。
もっとも私も、そんな珍しくもない動物を見るために、もの好きにも日本全国あちこちに出かけてしまうのであるが。あそこにたくさん猫がいるよ、と聞くと、いそいそと。
さて有名な猫島はいくつもあれど、なかでも私が特別だと思うのは、やっぱり相島(あいのしま)である。福岡県新宮町の沖合にあって、博多駅からも割に交通の便が良い。
「猫ちゃん、抱っこできたー! かわいいー!」
ああやはり今日も、親に連れられて来た子どもが飛び跳ねてはしゃいでいる。年の頃5、6歳だろうか。でも坊っちゃん。あなたの住む町にも間違いなく猫がいるでしょう、たぶんノラ猫も……。
いやもちろん、そういう問題ではない。もしかすると、人間以外の動物が自分と同じ空間にいるのを見ることで、ひとは孤独を癒されてホッとするのかもしれない。ましてやその動物たちが、自分を恐れず、猫じゃらしで一緒に遊んでくれ、たまには抱っこさえもさせてくれるのだとしたら。私も自宅で複数の(数は秘匿)猫を飼育しているのにも関わらず、よその猫を見に出かけていくのだから、まったくひとのことは言えない。