外国特派員協会での記者会見
では、なぜ伊藤氏は証人を揃えればすぐにばれる無理な嘘を執拗につくのか。
仕事の世話をしてもらおうという男性との初めての会食で、自ら進んで大量に酒を煽り、陽気に振る舞っていたとなれば、その後の出来事は明確な犯跡がない限り、当事者間で解決すべき痴話に過ぎなくなる。
国連でこの実態を正直に語ったうえで性被害を訴えれば、笑い者になるどころか、逆に厳しく糾弾されるだろう。進んで自ら大酒したことを認めたら、性被害者として打って出る根本が崩れてしまう。だから証人がいくらいようと、伊藤氏は飲酒を認めないのではあるまいか。
このあと、11時過ぎ、2人は店を出る。山口氏は投宿中だった白金台のシェラトン都ホテルの自室に、泥酔した伊藤氏を連れ帰った。
監視カメラの映像は、伊藤氏の着衣同様なぜか閲覧制限がかかっているが、ネットに流出した画像を入手・保存し、繰り返し見たところ、この時の伊藤氏は昏睡状態ではない。泥酔状態だ。
伊藤氏が執拗に主張するのとは異なり、山口氏は伊藤氏をタクシーから引きずり出していないし、その後も引きずってはいない。泥酔で足元のおぼつかない伊藤氏を、横で支えながら歩いている。
男性が、泥酔した美しい女性をホテルの自室に連れ帰ったのは、介抱の必要があったからか、性的な下心があったからか──。これは議論しようがない。
逆に、自ら進んで泥酔状態に陥った女性が、その後、生じたことについて、あとになって合意がなかったと主張しても、男性側が合意を主張すれば言い分は相殺されざるを得ない。
2人で勝手に喧嘩でもしておけばよいだけの話である。
だが伊藤氏の主張は、2人の痴話喧嘩に任せておけない深刻なものだ。
伊藤氏は朝5時頃に目覚めた時、山口氏に姦淫されており、その後、暴行を受けたと主張しているのだ。
「痛い、痛い」証言は食い違うが……
当夜から2年半近くあとに出された民事告訴の訴状から、彼女の主張する状況を引いておく。
1 原告が、痛みで目が覚めると被告からの性的被害に遭っている最中であった。(略)被告の行為に気づいた原告が「痛い、痛い」と何度も訴えたが、被告は行為を止めようとしなかった。
原告が、「トイレに行きたい」と言うと、被告はようやく体を起こした。その際に、被告が避妊具をつけていないことがわかった。
2 原告は、バスルームに駆け込んで鍵をかけた。バスルーム内には、ヒゲそりなどの男性もののアメニティがあり、タオルの上に並べられていたことから、その場所が、被告の滞在しているホテル内であることがわかった。
原告が鏡で自分の裸の体を見ると、乳首から出血しており、体がところどころ、傷ついていることが確認できた。原告は被告から服を取り戻して、直ちに部屋から逃げる必要があると考えた。
3 原告が、バスルームのドアを開けると、すぐ前に被告が立っており、そのまま肩をつかまれ、再びベッドにひきずり倒された。そして、抵抗できないほどの強い力で体と頭をベッドに押さえつけられ、再び性的暴行を加えられそうになった。
被告が原告の顔や頭と体を押さえつけ、自分の体で覆いかぶさった状態であったため、原告は息ができなくなり窒息しそうになった。原告が必死で自らの体を硬くし、体を丸め、足を閉じて必死に抵抗を続けたところ、頭を押さえつけていた被告の手が離れ、ようやく呼吸ができるようになった。
原告が、「痛い。止めて下さい」と言うと、被告は、「痛いの?」などと言いながら、無理やり膝をこじ開けようとしてきたが、原告は体を硬くして精一杯抵抗を続けた。
これが事実なら、凄まじい非道ぶりである。
だが山口氏は、次のように証言している。部屋に入った彼女が再三嘔吐をし、彼女自身の服や山口氏の所持品を吐瀉物で汚したために、彼女の衣服を脱がせ、ベッドに寝かせ、そのうえで彼女の汚れた衣服を水洗いし、バスルームに干して、自身が記者として配信する記事を執筆する仕事に掛かった。
伊藤氏は午前2時前後に起き出して、原稿を終えて伊藤氏とは別のベッドで仮眠していた山口氏に、再三詫びながら性的な誘惑をし、性行為に及んだという。
真相がどうだったかは、2人が一致した見解を述べる時が来るまで「ブラックボックス」のままだ。
が、何があり得ないことかは言うことができる。