浜田氏の厳しいコメントは至極妥当です。ただし、この番組を放送するテレビ局は恥を知る必要があります。それは、自らの不祥事に対して外部の専門家からなる第三者委員会に自らの行動を検証させた日本大学の方が、「メディアの沈黙」について自己検証で済ませているテレビ局よりはよっぽどマシであるからです。
公共の電波を独占利用するテレビが、自分のことを棚に上げて攻めやすいスケープゴートを厳しく叩くのは極めて不公正であり、放送の私物化です。
日本大学とテレビ局の対応を比較してみましょう。
まず日本大学は、7月6日に植物片を発見、12日後の7月18日に警察に届け出、8月3日の部員逮捕から20日後の8月24日に外部の弁護士による第三者委員会を設置して同部を無期限の活動停止処分にしました。
一方テレビ局は2004年ジャニー喜多川氏による性加害の最高裁確定の事実を約20年が経過した2023年4月にはじめて報道、8月4日に国連人権理事会による「メディアの沈黙」の指摘があったものの、10月になって一部テレビ局が自己検証番組を行なったのみで、いまだに第三者委員会を設置するという正式な発表はありません。不祥事を起こしたジャニーズ事務所に対しては「タレントに罪はない」という詭弁で取引を継続しています。
これはまさに「事実を矮小化、時に無いものとする不適切な姿勢」であると言えます。
事実を認めても責任を認めない
日本大学の林理事長は事実が確定する前日に行なわれた8月2日に囲み取材で「違法な薬物が見つかったとかそういうことは一切ない」と発言しましたが、例えばTBS社長も7月の定例会見で「報道に関しては、事務所への忖度はない」と発言しています。これはTBS『報道特集』の自己検証と矛盾しています。
各局の自己検証番組も「男性の性加害に意識が低かった」という通り一遍の弁解に終始する内容であり、まさに不都合の情報に目を瞑り、自己正当化しています。結局、自分たちの組織の中だけの常識にとらわれていて、外部環境がどれだけ変化しているか、外部の常識とかけ離れた判断をしています。
テレビ局は自己検証で「メディアの沈黙」の事実を認めても責任を認めないのです。これでは、組織の体をなしていません。薬物事件とは比較にならないこれだけの性加害事件を沈黙してガヴァナンス改革も発表しないのでは、結局同じような体質が残っているということです。
自分に優しく他人に厳しい日本のテレビ局の最大の問題は、自分にできないことを他人に求めていることです。これでは、視聴者が事案の軽重を判断することが困難です。
青木理氏:法務副大臣が選挙買収、しかも現金をばら撒いたという疑惑まで出てきている。文科政務官が女性との不適切な関係で辞める。それぞれ職務に密接した不祥事で辞めるのはブラックジョークだ。適材適所のインチキ性が露わになっている。岸田政権のダメージも大きい。
ブラックジョークそのもの。