平和の敵に与するナイーヴな論者たち
立憲民主党・岡田克也幹事長(VTR):台湾有事になったとしてもアメリカはハッキリ軍事介入するとは言っていない。軽々にそういうことを言う話ではない。
アナウンサー:実際、ペロシ下院議長の台湾訪問の際には台湾をどう守るのか記者に問われても「最大の力は民主主義」と強調し、軍事的関与には言及しませんでした。一方、バイデン大統領からは失言も。台湾有事の軍事的関与を肯定し、大きな衝撃を与えましたが、ホワイトハウスがすぐさま「政策に変更はない」と火消しに走ったのです。アメリカは台湾への軍事介入を曖昧にする戦略だと指摘するのは小谷教授。なぜアメリカはあえて戦う覚悟を示さないのでしょうか。
小谷哲男氏:中国側が「外部勢力が台湾独立を模索する動きがあれば武力行使を辞さない」という発言をしている。アメリカ側が台湾有事に介入すると明言してしまうと、中国からすれば外部勢力が関与しているので武力攻撃をしてもよいという判断になりかねない。
公明党幹部:中国を明らかに刺激している。本来なら避けてほしかった発言だ。
小谷哲男氏:勇ましい発言を「抑止」と勘違いなら大きな問題。台湾への支援を表明すればするほど、中国は台湾に対して軍事的圧力を強める傾向
アナウンサー:日中関係をめぐって岸田総理は、今月訪中する公明党・山口代表に習近平主席宛の親書を託す方針です。さらに来月には李強首相と会談を行う方向で調整をしています。
関口宏氏:初めて聞いた時に私は何てことを言うんだろうと思いました。
岡田氏も小谷氏も公明党幹部も関口氏も『サンデーモーニング』も、本当に情けなくなるほど、日本政府の戦略を全く理解していないと言えます。
麻生氏は自民党の副総裁であり、自衛隊の統制権を持つ内閣の意図を宣言できる存在ではありません。
一方、自衛隊の統制権を持つ内閣の長である岸田総理は、中国との外交を予定しています。岸田政権は、まさに極めてしたたかな【曖昧戦略 policy of deliberate ambiguity】による戦争抑止を行っているのです。麻生氏の発言を「勇ましい発言」と混同させるのは明確な認知操作です。
番組で麻生氏を批判する人たちの極めて大きな勘違いは、麻生氏が「戦う覚悟」を宣言すれば、中共が軍事的手段を行使できると思っていることです。このようなナイーヴすぎる論者は平和の敵に与しています。
加えて、「外部勢力が台湾独立を模索する動きがあれば武力行使を辞さない」という中共の一方的な脅しを拡大解釈して安易に屈することは、台湾の市民を見捨てることと同値です。
青木理氏:麻生氏は、前提として「最も大切なのはこの地域で戦争を起こさせないことだ」と言った後にこう言っている。それでも「戦う覚悟」というのは暴言ではないかと思うが、事前に官邸や外務省と相当すり合わせて行ったという報道もある。
だとすると、麻生氏は政府の役職はなくて自民党のNo.2で首相経験者として現地に行って、あんまり中国を刺激し過ぎないような役職でありながら、日本政府の官邸や外務省の意見を代弁したという可能性もある。そうすると、暴言と言いつつ、集団的自衛権の行使容認、敵基地攻撃能力を持ちつつアメリカと一緒に関与して行くんだという意思を日本が積極的に示したとも捉えられる。この発言にはいろんな裏がある。しかし相当危険な発言なのではないかという見方もできるのかもしれない。
「戦う覚悟」という麻生氏の発言は、青木氏が思うような「暴言」でもなければ「相当危険な発言」でもありません。
しかしながら、青木氏は、日本政府が展開している「曖昧戦略」については正しい理解を持っているようです。間違えやすいのですが、青木氏は基本的に「わかっているのにわざと間違える人」なのです。そこが大きな問題なんですけどね(笑)。
ちなみに「集団的自衛権」とは、同盟国の「セーフティ」の総体を「担保」にして平和裏に「セキュリティ」対策を行うものです。