ウクライナは明日の日本~戦国武将から読み解く明日へのヒント~|和田政宗

ウクライナは明日の日本~戦国武将から読み解く明日へのヒント~|和田政宗

ウクライナは、「専守防衛」「非核三原則」の平和主義で、ロシアの全面侵略を受けた。では、日本はどうすれば平和を守れるか、過去どのように平和を守ってきたか。安土桃山時代から江戸時代初期の日本に明日へのヒントがある――。


忘れられた国防力と外交力

(写真/「支倉常長像」仙台市博物館所蔵)

この外交使節団に欧州列強は驚愕した。団長・支倉常長をはじめとするきらびやかな装束と洗練された立ち居振る舞い、そしてこのような立派な外交使節団を太平洋を渡し、ローマまで派遣したことに驚きを持って迎えられたのである。

さらに、この使節団が差し出した書状によって、その後の日本の命運も変わることになる。それは書状の差出人の部分にあるのだが、差出人は「奥州王 伊達政宗」となっていた。これによって、欧州列強はどう考えたか。

こんなに立派な外交使節団を派遣したのが、日本の一地域の王であるのかと。すなわち、日本は各地の王からなる連合国家で、それを将軍が束ね、その上に天皇陛下がおられると。これだけ強大な国家は打ち負かすことが出来ないと考えたのである。

結局、慶長遣欧使節は、スペインに太平洋貿易を認めさせることはできなかったが、欧州列強からは「日本は世界の七大帝国のひとつ」と認識されるようになった。

これによって日本は幕末まで平和な世を保つことが出来たのである。しかし、日本は何によって平和がもたらされているかを次第に忘れ、軍事力、国防力の近代化を怠った。それが幕末の黒船来航、不平等条約の締結につながっていく。

今の日本の状況と幕末の状況は似てはいないだろうか。

しっかりとした国防力があることが自らの平和を保ち、外交力の駆使につながるのに、それを忘れてはいないか。そして、その外交力は、日本を守ることにつながり、絶対に侵略できない強い国家であると各国が認識すれば、世界の紛争の和平の仲介もできる。

自らの国を守ることに不安定な国が、緊迫する世界においてリーダーシップを発揮することはできない。日本はしっかり目覚めるべきである。

月刊『Hanada』2022年6月号

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