ウクライナは明日の日本~戦国武将から読み解く明日へのヒント~|和田政宗

ウクライナは明日の日本~戦国武将から読み解く明日へのヒント~|和田政宗

ウクライナは、「専守防衛」「非核三原則」の平和主義で、ロシアの全面侵略を受けた。では、日本はどうすれば平和を守れるか、過去どのように平和を守ってきたか。安土桃山時代から江戸時代初期の日本に明日へのヒントがある――。


“平和憲法”では国は守れない!

自民党安全保障調査会は4月21日、敵基地攻撃能力の保有、防衛費を5年でGDP比2%まで引き上げる政府への提言案をまとめた。抑止力を高め、我が国の平和を守るために重要な提言であり、政府の着実な実行が求められる。

ウクライナは、「専守防衛」「非核三原則」の平和主義で、ロシアの全面侵略を受けた。日本は国土と国民を守るために何が必要か、これまでの考えを改め、ゼロベースで国防を考え、今こそ必要な体制整備と憲法改正を行うことが重要である。

日本は「“平和憲法”によって平和が守られてきた」と主張する人がいるが、そうではないと、ロシアのウクライナ侵略で、改めて日本国民の多くは実感したであろう。

では、日本はどうすれば平和を守れるか、過去どのように平和を守ってきたか。それは安土桃山時代から江戸時代初期の日本にヒントがあり、参考にすべきであると私は考える。

当時、アジアにおいてはスペインやオランダ、ポルトガルといった欧州列強が進出し、宣教師によるキリスト教の布教、商人による貿易が行われた。アジア諸国は、欧州列強の狙いはこうした活動を起点とする植民地化にあると危惧し、宣教師や商人を自国から追い出し鎖国することを企図したが、逆に欧州列強の圧倒的な軍事力により占領され植民地化された。

こうした宣教師や商人の活動とその危惧は日本においても同じであった。そこで江戸幕府はキリスト教を禁教とし、貿易は長崎県の出島などでオランダと中国の2国のみと限定することとした。これに対し欧州列強は、他のアジア諸国と違い、日本の鎖国を認めた。

さらに、貿易国から外されたポルトガルは、日本との貿易再開を目指し1640年に使節団を長崎に派遣したが、70人余りの使者は大半が処刑された。ポルトガルにとって日本に対する開戦の絶好のきっかけを得たわけだが、そのままポルトガルは引き下がった。

豊臣秀吉と伊達政宗の外交力

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アジア諸国と日本の違いは何だったのか。

それは、日本が圧倒的な軍事力、国防力を誇っていたというところにある。当時の日本は、世界最多の鉄砲保有国であり、高度に訓練され実戦経験も豊富な武士がいた。日本を攻めても無駄だ、逆に反撃に遭えばアジアにある植民地が危機に瀕すると欧州列強は考えたのである。

こうして日本の鎖国は完成した。「日本は弱いから鎖国をした」のではなく、「日本は強かったから鎖国ができた」のである。

当時の日本は外交カードも上手に使った。たとえば豊臣秀吉は朝鮮出兵にあたり、スペインの植民地であったフィリピンのマニラ総督に「降伏せよ」との書状を送った。マニラ総督は、秀吉に攻め込まれれば危機と考え、スペイン本国に援軍要請とともに情報を伝えた。

こうして秀吉は朝鮮出兵にあたり、スペインを牽制し南方からの動きを止めたうえで、朝鮮を攻め、中国に攻め込もうと考えたのである。

さらに、鎖国の完成とその後の日本の平和に大きく寄与したのが、仙台藩主・伊達政宗公が派遣した外交使節団「慶長遣欧使節」である。この使節団がどういう経緯で派遣されたかであるが、1611年に起きた「慶長奥州津波」をきっかけとする。

東日本大震災の400年前に起きた「慶長奥州津波」は、東日本大震災と同等かそれ以上の津波規模であったと推定されている。この津波により仙台藩は大きな被害をこうむり、その復興事業として、スペインの植民地であったメキシコとの太平洋貿易を行おうと伊達政宗公は考えたのである。

そして、わずか2年で西洋式の大船を作り、当時、北米大陸から太平洋を渡ってアジアまでやって来た船が数隻しかないなかで、逆にアジア側から太平洋を渡り、北米大陸に船で外交使節団を送ったのである。その後、使節団はメキシコからスペイン船に乗り換え欧州に上陸し、スペイン国王、ローマ教皇に謁見し、貿易の許可を求めた。

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