<貝の王様に二礼二拍手一礼>
学生時代の四年間、京都に住んだが、丹後の「黒あわび」は夢のまた夢。
それがいま、目の前にある。
貝の王様に一礼では足りない。二礼二拍手一礼、で、いかがでしょうか。
蒸し煮にしても、黒あわびならではのコリコリは残っており(柔らかな食感も美味)、噛むほどに旨み広がる。
珍味である肝もついているので、美酒とともに食せば、無上の幸せ。
食べた直後に「ウマイ!」を言うのは嘘。三分は待ってほしい。
(編集部・野中)
田原屋與右衛門 越淡麗 純米大吟醸
<両親は二大エリート米>
米も、酒の味を決める大事な要素である。
新潟県糸魚川市で明治30年から酒造りを続ける田原酒造。同蔵の銘柄「與右衛門」シリーズのなかでも、これは酒造好適米「越淡麗(こしたんれい)」を使用した純米大吟醸だ。
新潟県が独自に開発した品種で、「山田錦」と「五百万石」という酒米の二大エリートを両親に持つ。
その味わいは柔らかく、ひたすらなめらか。雪解けの野に流れる、澄んだ水が目に浮かぶ。
清らかで贅沢な逸品だ。
(ライター・瀬戸内みなみ)