藪中三十二氏:今起きていることは、一言でいえば、米国の国内での内戦だと思います。本来、グローバリゼーションで一番儲かっているのは米国なんですよね。それをトランプさんは「世界が俺たちを略奪している」と。そんなことありえないですけど。
グローバリゼーションがうまく行っているのは東海岸と西海岸。真ん中の人たちがうまくいっていない。その戦争なんですよね。だからブルー対レッドの内戦だと僕は言っているんですけど。
藪中氏は、かなり端折ってコメントしているので、この状況を少し解説します。
英国の経済学者であるデヴィッド・リカードは19世紀初頭に【比較優位 comparative advantage】という概念を提唱し、【国際分業 international division of labor】と【自由貿易 free trade】の価値を論証する【比較生産費説 theory of comparative costs】という学説を発表しました。
これは、各国において他国よりも生産コストが低い商品を輸出して生産コストが高い商品を輸入すれば、各国に利益をもたらすことになるという理論です。
各国が生産性コストの低い商品を特化して生産する「国際分業」と、国家が貿易に介入しない「自由貿易」の体制を整えて世界を一体化すること、すなわち【グローバリゼーション globalization】によって、各国の利益はより大きくなるのです。
ここで、技術大国の米国は、どこの国よりも利益率が高い低コスト商品を生産することが可能です。つまり、藪中氏が言うように、米国はグローバリゼーションで一番儲かっている国であり、「世界が俺たちを略奪している」ということなどありえません。
ただし、米国の中で利益率が高い低コスト商品を生産する産業は、民主党を支持する西海岸と東海岸の州に集中し、共和党を支持する中部の州には保護が必要な斜陽産業が集中しています。
つまりこれは、藪中氏が言うような「ブルー(民主党)対レッド(共和党)」の内戦なのです。

トランプ氏が関税を上げれば、輸入品の価格が上昇するため、斜陽産業の競争力が上がり、結果として斜陽産業は保護されることになります。
しかしながら、これは斜陽産業の退場を遅らせるだけに過ぎませんし、輸入品の価格上昇分を負担しなければならないのは紛れもない米国国民なのです。
もしもトランプ氏が今回のような大きな損失をしても中部の国民を助けたかったのであれば、関税引き上げによる斜陽産業の保護ではなく、補助金給付による産業転換に取り組むのが合理的であったと考えます。

日本はトランプ関税とどう向き合うのか…17日の日米貿易交渉“3つの焦点”【サンデーモーニング】 | TBS NEWS DIG
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