【今週のサンモニ】「経世済民」は民主主義国では使っては駄目な言葉?|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「経世済民」は民主主義国では使っては駄目な言葉?|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


寺島実郎氏:これ、政治家個人のスキャンダルの問題なんかじゃなくて、日本の代議制民主主義の質というか、信頼が問われている問題だと思うんですね。これ、10月になって国会が動いたと。高市政権の本質みたいなものが見えてきていると思うんですね。
何よりも違和感を感じているのは、所信表明演説に遡ってみて、ビックリしたのは、やたらに「経世済民」という言葉を使ったんですね。この「経世済民」というのは、「経済」という言葉の語源にもなっているやつで、大変重要な言葉なんですよ。「世を治め民を救う」という。なんと漢籍、中国の文献を引用して、本当は、民主主義国家の指導者が使うべき言葉ではないんです。これは帝王学。皇帝の目線なんですよ。皇帝が世を治め民を救うという意味なんですね。強烈な上から目線なんですよ。皇帝なのかというね。
ここに不思議なことを感じるんですけど、これで所信表明演説をしっかりと見つめてますけども、だれが入れ知恵しているのかわからないけれど、民主主義というものを大切にするんだという姿勢が見えないというか、強烈な国家主義ね。国権主義。要するに権力のための志みたいなものは強烈に強いんだなということを感じるけれど、同時に成長なくして賃上げなしみたいなことを言っているんだけれど、強烈な経済主義というか。で、官製資本主義っていって、国が引っ張って行って経済を成功させるんだという。基本的に考え方を向き合って、正していかなければいけない部分があるなというのが僕のポイントですね。

首相、所信表明演説で「経世済民」引用 経済重視の姿勢を強調 - 日本経済新聞

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUA0516G0V01C26A0000000/

高市早苗首相は5日の所信表明演説で、中国の古典に由来する「経世済民」(世を治め民を救う)を引用した。「高市内閣の最優先課題は『経済』の力で国民の暮らしを守り、『希望ある未来』を切りひらくことだ」と語り、経済を重視する姿勢を強調した。「全ては『世を治め、民を救う』ため、共に前に進んでいこうではありませんか」と呼びかけた。固い意志をもつ者は最終的に目標を達成することを意味する「志ある者は、事ついに

寺島氏のコメントも突っ込みどころ満載のハチャメチャなイチャモンです(笑)。

まず、寺島氏は、漢籍にある「経世済民」は「皇帝が世を治め民を救う」という意味なので、民主主義国家の指導者が使うべき言葉ではないと非難していますが、「経世済民」は読んで字のごとく「世を治め民を救う」という意味であり、「皇帝」だけに限定された言葉ではありません。

ここに、民主主義とは、「統治者」と「被統治者」が同一であることを指すので、民主主義国家の文脈における「経世済民」は、「民が世を治め民を救う」と解釈すればよいのです。高市総理が所信表明演説で「経世済民」を繰り返したことをもって、高市総理が自らを「皇帝」と認識し、上から目線で「民を救う」と宣言したかのように解釈するのは、無理やり過ぎるイチャモンでしかありません。

そもそも、そんなことを言い出したら、近代民主主義より前の時代の政治指導者が発した格言や諺を民主主義国家の指導者は使うことができなくなります。

例えば、日本の天皇・皇族の名言である「民の竈は賑ひにけり(仁徳天皇)」「和を以て貴しと為し、忤ふること無きを宗とせよ(聖徳太子)」などはもとより、封建主義者であった戦国武将の名言も使えなくなります。「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり(武田信玄)」「戦わずして勝ちを得るのは、良将の成すところ(豊臣秀吉)」などは、すべて上から目線であり、アウトということになります。

さらに、寺島氏の妄想はどんどん巨大化し、最終的に、高市総理は「民主主義というものを大切にするという姿勢が見えない」「国家主義・国権主義」「権力のための志は強烈に強い」などといった悪口の言いたい放題となりました。

このように、あまりにも飛躍した解釈で、完膚なきまでに政権にイチャモンをつけるのが『サンデーモーニング』です。デジタルタトゥーが残る今日、もうやめた方がいいと思います(笑)

藤原かずえ | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/234

個人ブログ「マスメディア報道のメソドロジー」にて、論理学や心理学の定義に基づいた、メディアの報道・政治家の議論における論理的誤謬などの問題点を指摘。「ひるおび」「報道ステーション」「NEWS23」「サンデーモーニング」などの具体的な放送内容や議員の答弁、記者の発言などを例示しての論理的な分析が話題を呼んでいる。記事の一部を言論プラットフォーム「アゴラ」にも転載中。

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