繰り返される報道被害~なぜメディアは「捏造」をやめられないのか~|林智裕

繰り返される報道被害~なぜメディアは「捏造」をやめられないのか~|林智裕

発言の切り取り、事実の歪曲、捏造はもはや日常茶飯事。無責任に社会不安を扇動し風評被害をまき散らす。放送法は形骸化し罪に問われることもないためまさに「野放し状態」。時に炎上すればかたちだけの「謝罪」で、実態は多くが謝罪も訂正もなく被害者は苦しみ続け泣き寝入りせざるを得ない。繰り返される報道被害の深刻な実態を福島県からレポート。


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9年前の東電原発事故当時からマスメディアは、何も変わってこなかった。

たとえば、先ほども例にあげたテレビ朝日の玉川徹氏は、津波で甚大な被害を受けた岩手県や宮城県地域の瓦礫の広域処理に「放射能汚染」を理由に真っ向から反対していた。

瓦礫の広域処理が議論になっていた当時から、「懸念するような汚染は起こらない、健康にリスクを与えるようなものではない」ことは科学的な根拠を持って説明されたが、一部メディアはそうした科学的事実に真っ向から反する誤解を国民に広めていた。

このときの玉川氏を振り返って、当時の環境大臣であった細野豪志議員は「環境相の時、震災瓦礫の広域処理に反対一色だったテレ朝の番組に出演した。玉川氏には発言を遮られたが、岩手、宮城のガレキの広域処理の必要性を訴えた。彼らの反対意見に屈していたら目標通り三年で処理することはできなかった」と批判した。https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20200521-01862712-tospoweb-ent

細野議員が言うように、仮に社会がワイドショー先導の非科学的な世論、感情論に引っ張られて広域処理が行き詰まっていたならば、被災地外の人々の「安全であるにも関わらず安心できない」などといった不条理な理由で、被災地の子どもたちは未だに瓦礫に囲まれての生活を余儀なくされていた可能性すらあった。

現在、震災瓦礫の広域処理は予定通り終了したが、当然ながら「放射能汚染による健康被害」などおこらなかったことは実際に処理した施設での実測データの裏付けを添えて明言しておく。
https://www.city.kitakyushu.lg.jp/kankyou/01100011.html

ところが、当時無責任に反対したコメンテーターや政治家などからはこの件にいまだに謝罪も訂正もなく、そればかりか、今の新型コロナウイルス関連でも似たような言動を繰り返している。当時、メディアの無責任な報道に苦しめられた側としては言葉もない。
https://twitter.com/yamamototaro0/status/303145899222253568?ref_src=twsrc%5Etfw%7Ctwcamp%5Etweetembed%7Ctwterm%5E303145899222253568%7Ctwgr%5E&ref_url=https%3A%2F%2Fgendai.ismedia.jp%2Farticles%2F-%2F70534%3Fpage%3D6

「甲状腺がん」「汚染水」──メディアが作った風評被害

メディアによる報道被害は、さらに続いた。

「東電原発事故由来で子どもの甲状腺ガンが増えているのではないか」

こうした誤解は今も一部で広まったままだが、これはもう何年も前の国連科学委員会(UNSCEAR)2013年報告書の時点で、とっくに否定されたと言える状況だった。その後追加で出された白書によって、この見解の信頼性はさらに強化されている。

(引用)
『「UNSCEAR2013報告書」の8つのポイントを挙げる。

(1)福島第一原発から大気中に放出された放射性物質の総量は、チェルノブイリ原発事故の約1/10(放射性ヨウ素)および約1/5(放射性セシウム)である。

(2)避難により、住民の被ばく線量は約1/10に軽減された。ただし、避難による避難関連死や精神衛生上・社会福祉上マイナスの影響もあった。

(3)公衆(住民)と作業者にこれまで観察されたもっとも重要な健康影響は、精神衛生と社会福祉に関するものと考えられている。したがって、福島第一原発事故の健康影響を総合的に考える際には、精神衛生および社会福祉に関わる情報を得ることが重要である。(注2)
(注2)精神衛生=人々が精神的に安定した生活を送れるようにし、PTSDやうつなど精神・神経疾患を予防すること。社会福祉=人々の生活の質、QOLを維持すること

(4)福島県の住民の甲状腺被ばく線量は、チェルノブイリ原発事故後の周辺住民よりかなり低い。

(5)福島県の住民(子ども)の甲状腺がんが、チェルノブイリ原発事故後に報告されたように大幅に増える可能性を考える必要はない。

(6)福島県の県民健康調査における子どもの甲状腺検査について、このような集中的な検診がなければ、通常は発見されなかったであろう甲状腺の異常(甲状腺がんを含む)が多く発見されることが予測される。

(7)不妊や胎児への影響は観測されていない。白血病や乳がん、固形がん(白血病などと違い、かたまりとして発見されるがん)の増加は今後も考えられない。

(8)すべての遺伝的影響は予想されない。』
https://synodos.jp/fukushima_report/21606

ところがテレビ朝日系『報道ステーション』は、まるで「福島で被曝の影響によって甲状腺ガンが多数発生している」かのような、国際的な科学知見に真っ向から対立する報道を数年にわたり執拗に繰り返した。これに対し、2014年には環境省から「最近の甲状腺検査をめぐる報道について」とのタイトルで、異例の注意情報が発信されている。
(http://www.env.go.jp/chemi/rhm/hodo_1403-1.html)

テレビ朝日はさらに、2017年夏に全国放送した番組にも当初、『ビキニ事件63年目の真実~フクシマの未来予想図』というタイトルを付け、「ビキニ環礁の住民除染が済んだというアメリカの指示に従って帰島。しかし、その後甲状腺がんや乳がんなどを患う島民が相次ぎ、女性は流産や死産が続いた。体に異常のある子供が生まれるということも」と予告で語った。

わざわざ「フクシマの未来予想図」などというタイトルを付けた結果、避難指示解除に伴って福島への「帰(福)島」が進みつつある状況に対し、「政府を信じて帰還したらお前たちもこういう運命になる」とほのめかす悪質な意図を見出す人が当然増えた。

その結果、SNSを中心に番組への批判が続出し「炎上」すると、テレビ朝日は「誤解を招いた」などと苦し紛れの釈明をしてサブタイトルを削除した。しかし、「誤解とは具体的に何か」との数々の問い合わせは全て無視したまま今に至る。
https://gendai.ismedia.jp/articles/-/52558

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