リスクを取れない政治家は政権に就くな!
今回の危機が、スペイン風邪でも中国人民解放軍でもなく、弱毒の風邪ウイルスによるものだったのは不幸中の幸いであった。
この程度の事案にさえ全く対処できないほど、日本の政権の危機管理能力が極端に低いことが、国家崩壊レベルの危機に見舞われる前に露呈したことになるからである。
その根本的な原因は、判断リスクが高い事案に対してほど政治決断ができないという、政治指導力の不足にある。
リスク回避ばかりを狙う行き方は、官僚の方法論であっても政治指導者のそれではない。しかも、新型コロナ事案は判断リスクが高いといっても、昨年の秋にはすでに充分な判断材料が揃っていたのである。
尖閣・台湾危機、人口激減、皇室危機など、今後わが国は政府による判断リスクの極めて高い事案を矢継ぎ早に迎え撃たねばならない。
リスクを取れない政治家は政権に就くな。
いまは平時ではない、事実上すべての要素が戦時と化している。不決断、判断先送りは、明確な根拠と理性に基づく判断ミスを遥かに超えて、国家の大敗を招く。
政権要路の政治家は、部下や専門家に幅広く、判断材料を提示することを貪欲に要求し、根拠に基づく速やかな判断を下す訓練を自らに意識して課すこと――菅政権幹部、自民党で次期総理を狙う全ての政治家は、その点を肝に銘じていただきたい。
日本の歴史的大敗は迫っている。
(初出:月刊『Hanada』2021年7月号)
著者略歴
文藝評論家、社団法人日本平和学研究所理事長。昭和42(1967)年生まれ。大阪大学文学部卒業、埼玉大学大学院修了。第18回正論新風賞を受賞。主な著書に『約束の日―安倍晋三試論』(幻冬舎)、『徹底検証「森友・加計事件」――朝日新聞による戦後最大級の報道犯罪』(飛鳥新社)など。最新刊は『「保守主義者」宣言 』(扶桑社 )。