米中の政治混乱は日本の試練|矢板明夫

米中の政治混乱は日本の試練|矢板明夫

バイデンはトランプと比べ融和的な対中政策をとる可能性が高く、習政権は全力を挙げて米国との関係修復を試みる。しかし、トランプという強い「外敵」が消えることが、中国共産党内の権力闘争を激化させる可能性も指摘されている。党内で孤立感を強めた習近平。一歩間違えば、文化大革命のような大混乱を引き起こす可能性も!


米民主党のバイデン前副大統領が7日、大統領選挙の勝利宣言を行った。「開票に不正があった」と主張するトランプ大統領(共和)との法廷闘争を控え、米国の混乱はしばらく続きそうだが、中国の習近平国家主席はバイデン氏の当選確実に胸をなで下ろしているに違いない。トランプ政権との約2年にわたる対立で、習政権は内政、外交ともに大きなダメージを受け、中国の外交関係者はその対応に追われ続けていたからだ。

バイデン氏はトランプ氏と比べて融和的な対中政策をとる可能性が高く、習政権は全力を挙げて米国との関係修復を試みるとみられる。しかし、トランプ氏という強い「外敵」が消えることが、中国共産党内の権力闘争を激化させる可能性も指摘されている。北京在住の共産党関係者は「習氏はこれまで対米闘争の重要性を強調して党の結束を訴えてきたが、米国との緊張緩和に伴い、党内の国際協調派が台頭する可能性もある」と説明する。

Getty logo

中国の権力闘争激化か

注目されたのは、米国との対立に反対し、習氏と距離を置く李克強首相、胡春華副首相ら共産党の下部組織である共産主義青年団の出身者(団派)の動きだ。特に李氏は今年春以降、さまざまな場面で規制緩和の重要性を強調し、習氏の経済政策を暗に批判するようになった。2022年秋の党大会を控え、ポスト習近平をめぐる党内の主導権争いが本格化したことが背景にあるといわれる。

共産党総書記としての先輩である江沢民氏や胡錦濤氏らの例に倣えば、2期目を終える次の党大会で引退しなければならない習氏だが、党の規約を改正して党主席のポストを復活させ、これに自ら就任して、終身制を目指しているといわれる。これに対し、李氏らは団派のホープ、胡春華氏を次の総書記にしたい考えといわれる。

権力闘争はこれから激化するが、習氏にとって最大のピンチは、1期目の習政権を支えた王岐山国家副主席ら「太子党」(党の元高級幹部の子)グループの多くと仲たがいをしたことだ。習氏自身も太子党グループの一員だったが、最近の経済低迷を受け、習氏は特権階級である太子党らの資産に目を付け、汚職などの容疑で資産を没収し始めたことで対立のきっかけをつくったといわれる。

日本は不測事態に備えよ

関連する投稿


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


【読書亡羊】トランプとバイデンの意外な共通点  園田耕司『覇権国家アメリカ「対中強硬」の深淵』(朝日新聞出版)

【読書亡羊】トランプとバイデンの意外な共通点 園田耕司『覇権国家アメリカ「対中強硬」の深淵』(朝日新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

プーチンは「内部」から崩れるかもしれない|石井英俊

ウクライナ戦争が引き起こす大規模な地殻変動の可能性。報じられない「ロシアの民族問題というマグマ」が一気に吹き出した時、“選挙圧勝”のプーチンはそれを力でねじ伏せることができるだろうか。


「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

「もしトラ」ではなく「トランプ大統領復帰」に備えよ!|和田政宗

トランプ前大統領の〝盟友〟、安倍晋三元総理大臣はもういない。「トランプ大統領復帰」で日本は、東アジアは、ウクライナは、中東は、どうなるのか?


最新の投稿


日本保守党初陣の裏方日記|広沢一郎

日本保守党初陣の裏方日記|広沢一郎

日本保守党事務局次長の広沢一郎氏が日本保守党の初陣となった選挙戦の舞台裏をはじめて綴る。〈あれこれ探している時間がなかったので今回は私が2011年の県議選用に買った自転車を名古屋から運びました〉


【今週のサンモニ】病的反日陰謀論の青木理氏は今週も絶好調|藤原かずえ

【今週のサンモニ】病的反日陰謀論の青木理氏は今週も絶好調|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


薄っぺらい記事|なべやかん遺産

薄っぺらい記事|なべやかん遺産

芸人にして、日本屈指のコレクターでもある、なべやかん。 そのマニアックなコレクションを紹介する月刊『Hanada』の好評連載「なべやかん遺産」がますますパワーアップして「Hanadaプラス」にお引越し! 今回は「薄っぺらい記事」!


【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。