零細企業の倒産が日本にとってプラスな理由|デービッド・アトキンソン

零細企業の倒産が日本にとってプラスな理由|デービッド・アトキンソン

厚生労働省の調査によると、このコロナ禍の影響で仕事を失った人は、見込みも含め、製造業では1万人を超えたという。しかし、目先の数字に一喜一憂してはいけない、大事なのは数字の「中身」だと、デービッド・アトキンソン氏は説く。 伝説のアナリストが、中小企業神話の嘘を暴く!


失業者1400万人?

5月14日、39県で緊急事態宣言の解除が発表されたものの、倒産・廃業・清算する会社がこれからますます増えるのではないか、日本経済は大丈夫なのか、という不安が国民の間に広がっています。  

今後、マスコミでは、「これから中小企業は○○万社倒産、○○万人の失業者が出る」などとさまざまな予測が出てくるでしょう。すでにあるネット記事では、「5月末まで緊急事態宣言が続いた場合、1400万人の失業者が出る」と試算しているものがありました。  

しかし、それら目先の数字に惑わされてはいけません。大事なのは、その数字の「中身」です。  たしかに、今回のコロナ・ショックで倒産・廃業・清算する企業は出てくるでしょう。しかし、私はそれほど日本経済に影響はない、と見ています。  

どういうことか。まず、先述した「失業者1400万人説」を検証してみましょう。

 この試算のベースとなっているのは、共同通信社の記事です。

〈新型コロナウイルス感染拡大がいつまでに終息すれば経営的に乗り切れるか、3月末に中小企業に聞いたところ「3月末」から「6月末」との回答が計6割に上ったことが26日、エヌエヌ生命保険(東京)が実施した全国の経営者への調査で明らかになった。感染が早期に収まらなければ相次いで経営危機に陥る恐れがある。外出自粛などで観光業や飲食業など幅広い業種の売り上げが急減しており、担当者は「運転資金の需要が高まっている」と指摘している。  
回答は「4月末」が20・3%、「5月末」は16・6%、「6月末」が15・5%で続いた。「3月末」も含め「6月末」までが計59・5%に上った〉

試算の「大きな落とし穴」

中小企業庁HPより

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