【読書亡羊】必読、対中国「政治戦」の教科書を見逃すな!  ケリー・K・ガーシャネック著、鬼塚隆志監修、壁村正照訳『中国の政治戦 -「戦わずして勝とう」とする国への対抗戦略』(五月書房新社)

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その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする週末書評!


「実用的」な対中戦略の指南書

本書は政治戦を海兵隊将校として実践的に学んできた筆者が書いただけあって、内容も現状報告や分析にとどまらず、実に「実用的」なものになっている。

特に付録として巻末に収録されている「対中国戦5日間課程のカリキュラム」は興味深い。あくまでも入門の入門としてではあるが、中国の政治戦に対抗するために、どういった内容を、誰にどの程度学ばせるべきか、その具体的な時間割まで掲載されているのだ。

〈米国をはじめとする多くの民主主義国家は、中国の政治戦に立ち向かい、打ち負かす準備ができておらず……中国の覇権に反対する米国や他の国々では、国家安全保障の専門家だけでなく、政府関係者全体に脅威とそれに対抗する方法を教える体系的な教育プログラムを開始することが不可欠である〉

ぜひ日本向け、それも政治家だけでなく、メディアや一般向けにもこうしたプログラムを公開してもらいたい。

まずは、本書をまさに教科書として、「中国の政治戦」に対する知識を高めておきたいところだ。

梶原麻衣子 | Hanadaプラス

https://hanada-plus.jp/articles/712/

ライター・編集者。1980年埼玉県生まれ。月刊『WiLL』、月刊『Hanada』編集部を経てフリー。雑誌、ウェブでインタビュー記事などの取材・執筆のほか、書籍の編集・構成などを手掛ける。

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