虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

虚しき岸田政権のコピペ外交|山口敬之【WEB連載第21回】

11月13日、東アジアサミットで中国を名指しで批判した岸田首相。「岸田首相は覚醒した」「初めて毅然とした姿勢を示した」と評価する声も出たが、はたして本当にそうだろうか。岸田首相の発言を検証すると、バイデン大統領の発言と「ウリ二つ」であることがわかった――。(サムネイルは首相官邸HPより)


バイデンに踏み絵を踏まされた

アメリカがいない局面では、どのような発言をしたのか。

11月13日朝に行われたベトナムとの首脳会談で岸田首相は、「東シナ海・南シナ海情勢、北朝鮮情勢についても引き続き連携していきたい」と述べている。

このほかタイやドイツの首脳との会談でも「東シナ海・南シナ海、北朝鮮、ミャンマーを含む地域情勢についても意見交換を行いました」。

東シナ海の問題とは、すなわち我が国固有の領土である尖閣海域への中国の公船の執拗な侵入であり、8月4日の中国による弾道ミサイル11発の撃ち込みである。

ASEAN各国など、中国と領土問題など懸案を抱える相手国の首脳は繰り返し中国を名指ししている。もし岸田首相が覚醒し、「中国に対しても毅然とした対応をする」と決意したのであれば、尖閣や弾道ミサイルに関してASEAN諸国と連携する絶好の機会だったのだ。

ところが岸田首相はこうしたチャンスを棒に振り、中国という単語すら口にすることができず、「東シナ海の問題」などとお茶を濁し続けた。北朝鮮やロシア、ミャンマーなどについては、きちんと国名を口にしているにもかかわらず……。

岸田首相は覚醒していないのではない。あまりに中国に弱腰であるためバイデンに踏み絵を踏まされただけなのだ。

こうした事実確認と関係者取材の末に、私はメルマガや各種動画で「東アジアサミットでの岸田首相の中国名指し発言はアメリカに言わされたもの」と指摘した。

すると岸田擁護派からは「あれは岸田首相が自分の言葉で語った」「中国に毅然とした態度で接するとの決意の表れ」との異論が出た。

官邸が認めた「事前調整」と岸田外交の本質

しかし、この論争は翌日の大手メディアの報道で瞬時に決着した。11月17日夜に行われた日中首脳会談に関連して、政府筋が東アジアサミットでの中国名指し批判発言について「アメリカ側と事前調整した」と、あっさり認めたのだ。この件の報道が一番詳しかったのは、朝日新聞だ。

「この発言について官邸幹部は、どこまで踏み込むか『米国など各国と事前に話し合っていた』と明かした」
「直後の日米首脳会談で、首相はバイデン大統領と、習氏との会談に互いにどう臨むかを確認した」

11月18日 朝日新聞朝刊

関連する投稿


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)


「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

「子供1人生んだら1000万円」は、とても安い投資だ!|和田政宗

チマチマした少子化対策では、我が国の人口は将来半減する。1子あたり1000万円給付といった思い切った多子化政策を実現し、最低でも8000万人台の人口規模を維持せよ!(サムネイルは首相官邸HPより)


【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは  『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

【読書亡羊】出会い系アプリの利用データが中国の諜報活動を有利にする理由とは 『トラフィッキング・データ――デジタル主権をめぐる米中の攻防』(日本経済新聞出版)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

改正入管法で、不法滞在者を大幅に減らす!|和田政宗

参院法務委員会筆頭理事として、改正入管法の早期施行を法務省に働きかけてきた。しかしながら、改正入管法成立前から私に対する事実無根の攻撃が始まった――。


最新の投稿


【今週のサンモニ】病的反日陰謀論の青木理氏は今週も絶好調|藤原かずえ

【今週のサンモニ】病的反日陰謀論の青木理氏は今週も絶好調|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米「反イスラエルデモ」の真実―トランプ、動く! 【ほぼトラ通信3】|石井陽子

全米に広がる「反イスラエルデモ」は周到に準備されていた――資金源となった中国在住の実業家やBLM運動との繋がりなど、メディア報道が真実を伝えない中、次期米大統領最有力者のあの男が動いた!


【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

【今週のサンモニ】「報道の自由度」ランキングを使ってミスリード|藤原かずえ

『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。


【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか?  ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

【読書亡羊】あなたは本当に「ジャーナリスト」を名乗れますか? ビル・コバッチ、トム・ローゼンスティール著、澤康臣訳『ジャーナリストの条件』(新潮社)

その昔、読書にかまけて羊を逃がしたものがいるという。転じて「読書亡羊」は「重要なことを忘れて、他のことに夢中になること」を指す四字熟語になった。だが時に仕事を放り出してでも、読むべき本がある。元月刊『Hanada』編集部員のライター・梶原がお送りする時事書評!


衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

衆院3補選「3つ勝たれて、3つ失った」自民党の行く末|和田政宗

4月28日に投開票された衆院3補選は、いずれも立憲民主党公認候補が勝利した。自民党は2選挙区で候補者擁立を見送り、立憲との一騎打ちとなった島根1区でも敗れた。今回はこの3補選を分析し、自民党はどのように体勢を立て直すべきかを考えたい。(サムネイルは錦織功政氏Xより)