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山際澄夫の「左折禁止!」

北朝鮮情勢・「蚊帳の中」に入るなら核武装の検討を!

月刊Hanada2018年7月号』より

■なぜ米国人3人だけが解放されたのか

日本が北朝鮮危機で正念場を迎えている。安倍首相は日米同盟の強固さを強調するが、南北首脳会談に続いて、米朝首脳会談が日本の頭越しに決められたのは不安感を高めた。日本は多国間外交の「蚊帳の外」なのではないか、という声まである。

文在寅大統領、李克強首相を日本に招いて行われた日中韓首脳会談も、「完全、検証可能かつ不可逆的な方法」での核廃棄が重要だとする日本と、「並行して対話を進める」という中韓の差は歴然としていた。

そこで安倍首相が行った努力は、涙ぐましいばかりだった。特に李克強首相に対しては、かつては警戒感を隠さなかった一帯一路に手を差し伸べる提案をし、中国の土地買収に警鐘が鳴らされる北海道訪問にまで同行して笑顔を振りまいた。その背景に北朝鮮情勢があるのは間違いない。核、ミサイルだけでなく、拉致事件の先行きも見えないなかで、北朝鮮への影響力を増す中国を敵に回すわけにはいかないということだろう。

これに対して、金正恩は日本の焦りを見透かすような対応に終始している。南北会談では、文在寅大統領が拉致事件の解決を求める日本の意向を伝えたが、金正恩の回答は「韓国やアメリカなど、周りばかりが言ってきているが、なぜ日本は自分で言ってこないのか」だったという。その後も、北朝鮮の朝鮮中央通信が「拉致は解決済み」とし、「日本は過去の清算を回避しようとしている」と非難している。過去の清算とは、2002年の日朝平壌宣言で、日本が認めた植民地支配と、その償いとしての経済協力を指す。

そんななかで、日本に大きな衝撃を与えたのが、北朝鮮による拘束米国人3人の解放である。3人は平壌科学技術大学で働いていた韓国系米国人で、1、2年、労働収容所に収容されていた。トランプ大統領は3人の帰国を「金正恩氏に感謝している」と大歓迎し、帰国時には深夜にもかかわらず、ワシントン郊外の空軍基地に出迎えた。

この解放を日本人拉致被害者家族は、どんな思いで受け止めただろうか。横田早紀江さんは、「3人の米国人を解放できるのであれば、何の落ち度もない日本人拉致被害者も解放できるはずだ」と語ったというが、解放されたのが日本人でも韓国人でもなく、米国人だった答えは簡単だ。

■軍事力なき外交力などあり得ない

それは、米国本土を脅威に晒す核とICBMを廃棄しなければ、金正恩体制を壊滅に追い込む軍事力の行使を躊躇しない、との確固たる決意を何度も表明しているからだ。空母3隻を投入しての度重なる警告、そして化学兵器を使ったシリアのアサド政権に対する空爆など、北朝鮮はトランプ大統領の果断な行動に震え上がったのである。

日本人拉致被害者五人が帰国した2002年の日朝首脳会談が実現したのも、きっかけは米国が北朝鮮を「ならずもの国家」と断定し、軍事攻撃も否定しなかったからというのは有名な話だ。

これに対して日本は、拉致は最重要課題と言っても、軍事力によって奪還するわけではない。日朝平壌宣言もそのまま、国内では朝鮮総連の制裁すら行わない。極端に言えば、米国をはじめ、他国に協力を訴えるだけなのである。袞竜の袖に隠れるという言葉があるが、安倍首相の並みはずれた奮闘にもかかわらず、関係国にすれば、日本は経済力だけを頼りに、いつも米国の後ろに隠れているとしか映っていないのではないか。

かくなる国情では、そもそも日本が蚊帳の外であっても何の不思議もない。

拉致被害者の扱いは米朝交渉の行方に委ねられ、核、ミサイルの廃棄も、米国と北朝鮮、韓国、中国だけで決まり、日本には経済支援の請求書だけが回されるということもあるかもしれない。それも、段階的な核廃棄という主張が通り、日本に向けた中距離、短距離ミサイルが残されることも大いにあり得る。

戦後70年以上経っても、占領基本法ともいうべき憲法しか持たず、国防を真剣に考えず、一国の代表が大東亜戦争で命を国家に捧げた英霊を祀る國神社にも参拝しない国が、国際社会でまともに扱われるわけがない。

拉致被害者を自ら奪還することも考えずに、同盟国といってもあくまで他国である米国に依存するのが間違いなのである。

となると、やるべきことはひとつしかない。いまの状況を国難と認識し、憲法改正の断行を含め、日本を蚊帳の中に入れるまともな国に戻すべきだ。そして北朝鮮が核を放棄しないなら、日本も対抗して核武装の検討に着手すべきである。

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著者略歴

  1. 山際澄夫

    ジャーナリスト 1950年、山口県下関市生まれ。産経新聞政治部で首相官邸キャップ、外務省キャップなど歴任。その後、ニューヨーク支局長、外信部次長などを経て退社。著書に『これでも朝日新聞を読みますか?』『すべては朝日新聞から始まった「慰安婦問題」』など多数。月刊『Hanada』で「左折禁止!」連載中。

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