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電脳三面記事 蛭゛芸子

「ネット予約」の罠

■「その顔どうなの?」

先日、面と向かって「その顔どうなの?」と言われたのです。美醜の問題ではもちろんありません。花粉症が肌に出ていることへの指摘でした。仕方がないので、前に一度だけ行ったことのある、アレルギー科のある医者に行くことにしました。

初診は飛び込みOKも、次からはネットで予約と強く言われていたので諾々とそれに従い、予約をし、予約時刻の15分前に行って30分待たされ、診療のほかにアレルゲンの検査もしてもらうつもりだったところ、じっと顔を見つめた医師が「その顔どうなの?」と言う代わりに、「別の検査もしましょう」と指定難病の名を告げられました。

はーっと思った私は、当然のことながらネットを駆使して情報を収集し、なるほど若い女性に発症しやすいのかと納得したのち、私に何かあって形見分けで親族がもめたら嫌だなと思い至り、家のなかの金目(金が目的の意にあらず)の物探しが始まったのですが、発掘されたのは、使っていない電子レンジと使わなくなったキャニスター型の掃除機でした。

電子レンジはドアを開閉するレバー部分にひびが入っています。長年、大事にしまっておいたスニーカーを履いた途端、ソールがぱっくり割れるのはウレタンが加水分解によって劣化するからだそうですが、ああ、このレバーもそうなんだろうなと思い、ここから電磁波が漏れたらいやだなとも思い、放置していた20世紀の逸品です。

掃除機は、スティック式を購入後とはいえ吸引力が必要な場合はキャニスター型が必要になるだろうと判断し保管していた、ブランド統一前の商品ゆえ「Panasonic」ではなく「National」ロゴが入ったこれまた逸品です。久しぶりにそのロゴを見て、「ああ、この話は『Hanada』に書くにふさわしいな」と感じ入りました。

■「ネットが使えない私はダメなのか」

処分することにしました。粗大ゴミです。居住自治体のサイトでいくら必要かをチェックし、申し込みます。自治体配布のパンフレットにも最低限の情報は記載されているのですが、このエリアはいつが回収日なのかなどのきめ細かい情報は、サイトにしか見つけられませんでした。

問題はここからです。古い電子レンジ、つまり重い物体をどうやって集積所まで持っていくのか。65歳以上の高齢者や障害者が一人暮らしの場合は持ち出してくれるサービスがあるようですが、病が疑われるヤングの私は自力で棚から下ろし、家の外に出し、集積所へ持っていかなくてはなりません。ああ、こんな重いもの、私に持てるわけがないのです。

杞憂でした。ただ、64歳になった私にできるかというと疑問で、もうちょっと、親切でもいいのではと思いました。きっと65歳未満でも、泣きつけば助けてもらえるのでしょう。でも、コンプライアンス精神が磨かれている人は、遠慮するはずです。病院の予約も同様です。ネットが使えない私はダメなのかと思ってしまう人がいるはずです。

インターネットの人口普及率は、2015年末時点で83%。この数字、インフラとしては高いとは言えません。さらに、高齢者を中心に、閲覧はできても各種申込みは苦手という人もいるでしょう。ネット受付オンリーの病院は、そういう人たちへの門戸を狭めているのです。

ベンチャー、最近はスタートアップと言うそうですが、そういった新しい会社が自社ビジネスの効率化のために非効率、すなわちネット以外での対応を切り捨てるのならわかりますが、医療サービスでこれはどうなのか。病院に対しては、電話予約も受け付けるなら診療報酬プラス、ネットのみならマイナスというルールにしてもいいのではと思いました。

そのうち、フェイスブックアカウントがないと受け付けないといった具合に暴走しそうでもあります。

検査の結果は、無自覚だった食品アレルギーが見つかっただけでした。

 

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著者略歴

  1. 蛭゛芸子

    「ネットはよく分からないけれど文章に惹かれる」というオジサマファン多し。

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