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有本香の「香論乙駁」

「ネットとの横並び」を恐れるテレビ業界の阿鼻叫喚

 月刊Hanada2018年6月号より掲載 

■AbemaTVに安倍総理が登場!

昨年の総選挙前に出演したある番組が、最近になって多くの人から「目の敵」にされている。昨年10月、インターネットテレビ局 Abema TV が放送した『徹の部屋』という番組だ。「徹」とは、出版社・幻冬舎の社長、見城徹氏。業界の風雲児とも呼ばれる見城さんがホスト役を務め、自身の部屋のように設えたスタジオに「お友だち」を招き、他では聞けない話をするという番組だ。

その『徹の部屋』に昨年10月8日、メインゲストとして安倍総理が出演された。私は、元テレビ朝日政治部長でジャーナリストの末延吉正さんとともに聞き手ゲストを務め、番組アシスタントは大石絵理さんが務めた。


「お友だちトーク」番組なので、敢えて台本も打合せもなし。番組の「売り」でもあるそのスタイルは、ゲストが総理大臣でも変わらない。見城さんからは事前に、「有本、キミが総理に訊きたいこと、どんどん訊いてくれればいいから」とだけ言われていた。そうして、ぶっつけ本番生放送は始まったが、放送中のツイッター等での反応は上々、最終的には、番組史上最高の視聴数を記録した。

番組終了後も、感想がたくさん寄せられた。なかでも目立ったのは、ふだん政治には関心がなかったという若い視聴者から、「安倍さん、あんなに良い人だと思わなかった」「総理が日本のため一生懸命仕事していると初めて知った」「インドへ行ったことさえ知らなかった」などという声が多数届いたことである。

「知らなかった」コメントのオンパレード。それも当然だ。昨年2月から新聞テレビは連日連夜、「モリカケ、モリカケ」の大騒ぎ。ただただ「安倍総理はトンデモナイ悪人」という大キャンペーンが行われていたのだから。

政権批判、権力批判は大いに結構だ。が、そのためにもまず総理が「どんな仕事をしているか」を知らせるべきと思うが、それはしない。したがって、日本のマスメディアに真っ当な政治論評は一切なしという不幸な状況はいまも続いている。

■田原総一朗氏の「アジ」

この『徹の部屋』が最近になって、ジャーナリストの田原総一朗氏はじめ複数のマスメディア関係者に取り沙汰されている。半年前、多くの視聴者が寄せた「佳き反応」とは対照的に、田原氏は同じ AbemaTV が放送する別の番組に出て、『徹の部屋』のことを次のようにクサした。

「(安倍さんは)放送法4条を変えると言っている。どうもその原因は、Abema TV(『徹の部屋』のこと)に出た時にとっても良かったんだよ。みんな安倍さんをヨイショした。ところが、いまの地上波は安倍批判が多いと。AbemaTV みたいな番組が多くなったほうがいいと……」

ここでいきなり身を乗り出し、例の「指差し田原スタイル」で声を張り上げて、「何で、みんな! 安倍ヨイショしたの、あん時!」とスタジオに居た共演者を恫喝したものの、共演者一同はポカンとしていた。憐れなことに、田原氏は『徹の部屋』が別の番組ということすら知らず、誰かから聞いた話で「安倍ヨイショ番組ケシカラン!」とアジったのだ。

長年、テレビの世界でヨイショばかりされてきたために、事実確認という基本動作を怠っても平気で怒鳴りまくるこの人の姿は痛々しいが、この「安倍が見城のネット番組でヨイショされて気持ちよくなり、地上波を駆逐するため放送法を変えたくなった」という偽ストーリーを騙るテレビ関係者は他にもいる。

■既得権を守る人たち

だが、これは彼らお得意のブラックプロパガンダだ。虚偽を取り混ぜ、重要な事実を隠しながら自らに利する情報を広報・拡散し、民衆と敵を混乱させるその手法は、モリカケ報道とも共通するところがある。

実は、田原氏らテレビ関係者は、「放送法4条」が変えられて「政治的公平」が損なわれることを怖れているわけではない。彼らの本心は、自分たちの既得権が侵されることを怖れているのだ。

放送法4条の政治的公平性など、いまでもまったく守られていない。テレビは朝から晩まで反安倍一辺倒、しかも同じ放送法四条にある「放送は事実を曲げないですること」の条項すら踏み外し、をたれ流して平然としている。彼らは、憎っくき安倍によって、放送と通信、すなわち地上波とネットの垣根が取り除かれることを怖れている。つまり、ネット番組と横並びにされ、自分たちがボロ負けし、淘汰されることを怖れているのだ。

これまで、他業種に対しては「規制緩和だ」「自由競争しろ」とエラソーに説教垂れてきたテレビ人が、自らの業界の「規制緩和」には必死で抵抗し、既得権にしがみつこうとする。そんな阿鼻叫喚の醜態に騙される国民が少なからんことを祈るばかりである。


月刊『Hanada』7月号、5月26日発売!

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著者略歴

  1. 有本香

    ジャーナリスト 1962年生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経験したのち独立。現在は編集・企画会社を経営するかたわら、世界中を取材し、チベット・ウイグル問題、日中関係、日本の国内政治をテーマに執筆。ネットメディア「真相深入り! 虎ノ門ニュース」、ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy Up」レギュラーコメンテーター。著書に、『「小池劇場」が日本を滅ぼす」(幻冬舎)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす―日中関係とプロパガンダ』(石平氏と共著、産経新聞出版)など。

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