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朝日新聞は「アッキーストーカー」だ! 岩瀬朗

■「いいね」まで追跡


朝日新聞デジタルというウェブ限定の記事とはいえ、この日の朝日の報道には脱力せざるを得なかった。


昭恵氏、「野党のバカげた質問ばかり」に「いいね!」
 安倍晋三首相の妻昭恵氏のフェイスブック(FB)に「野党のバカげた質問ばかりで、旦那さんは毎日大変ですね。国会には、世間には先を読めない人間が多過ぎますね」などと記した投稿があり、昭恵氏のアカウントから「いいね!」ボタンが押されていることが13日、分かった。
 投稿があったのは11日夜。この投稿主は「野党のバカげた質問」と記すと同時に、「与党とか野党とかそんなケチなことを言わず、これからは皆のために、物の本質を見た政策、制度をどんどん実現すべき」とも書き込み、学費や医療費の無料化などに取り組むべきだと主張していた〉(2018年3月13日)


担当記者は「昭恵叩き」に興じる自社の紙面(社論)や上司の意向を忖度して書いたのか。あるいは本当に「こんな投稿に『いいね』を押すなんて許せない」と怒りを抑えながら書いたのか。あるいはもっとビジネスライクに、「閲覧数が増えるだろう」と考えたのか。 いずれにしろご苦労なことである。


朝日新聞は2017年7月8日にも「昭恵氏がフェイスブックで『いいね』」を押した、というニュースを紙面にまで掲載している。


FBで昭恵氏「いいね!」 「やめろ」コールは「プロの活動家による妨害」
 安倍晋三首相が東京都議選で応援演説する最中に街頭で起きた「やめろ」コールについて、「プロの活動家による妨害」とするフェイスブック(FB)の投稿に対し、首相の妻昭恵氏のアカウントから「いいね!」ボタンが押されていたことが7日、分かった。
 投稿は、首相が1日に東京・秋葉原で応援演説した際に聴衆の一部から「やめろ」コールが起きた様子を報じたテレビ番組を取り上げ、「ヤジじゃなくプロの活動家による妨害」と書き込んでいた。首相はこの演説で、「やめろ」コールを続ける一団に対し、「こんな人たちに負けるわけにはいかない」と反論。野党からは「傲慢だ」などと非難の声が上がっている。〉


昔は取材に行かずに記事を書く記者を「コタツ記者」と呼んだが、いまは「スマホ記者」と呼ぶべきかもしれない。ネットで騒ぎになっている話題についてちゃちゃっと書いた記事が紙面に載る。「昭恵叩きの材料になるなら『コタツ記事』でも『スマホ記事』でもOK」ということか。

 

■思想にまで踏み込む


朝日新聞は、2017年2月9日の「森友学園問題」報道開始以降、安倍総理夫人である昭恵氏の動向をこれでもかと追跡し、記事にしてきた。森友学園の前理事長・籠池泰典氏や夫人である諄子氏が昭恵氏との関係を口にした情報をそのまま見出しに打つなど、「森友問題」を報じる記事では再三に渡り、「昭恵氏」の名が登場。

本誌2018年5月号でも有本香さんが「昭恵夫人叩きは現代の魔女狩り」という記事を寄稿されている。特に籠池氏の証人喚問翌日の紙面の激しさは指摘されている通りである。その執拗さ、見出しの打ち方、言挙げぶりはまさに「魔女狩り」だ。

2017年の朝日は異常だった。昭恵氏がイベント出席を取りやめたと報じ(〈昭恵氏、会議参加中止〉、2017年3月28日)、首相夫人付き職員の随行先について「『昭恵農場』にも同行」(2017年4月19日)などと小言を言い、そして先のようにフェイスブックで「いいね」を押したと小突きまわし、ついには思想信条の自由にまで踏み込んだ。


安倍昭恵氏の思想とは スピリチュアルへの関心、論壇も注目
 学校法人「森友学園」への関与で注目される首相夫人の安倍昭恵氏。論壇ではこの間、「家庭内野党」と称されてきた昭恵氏の思想に新たな角度から光が当てられている。焦点は、スピリチュアルへの傾斜と国粋的な傾向とが共存しているように見える点だ〉(2017年4月6日)


かつての首相夫人・鳩山幸氏は「UFOに乗って金星に行った」「私は太陽をパクパク食べている」などという発言がロイターやAPなど大手海外メディアでも報じられた。首相夫人がどんな思想であろうと勝手だろうが、比べるまでもなく「太陽パクパク」の方がよほど恥ずかしい。

「首相夫人付き職員」の動向が問題になると、「首相夫人は私人か、公人か」という議論が沸き起こった。2017年3月15日には民進党の逢坂誠二衆院議員の質問主意書に対する答弁書として「首相夫人は私人」という閣議決定がなされた。

この「私人か、公人か」「活動に公務員を随行させるのはどうか」という問題は、一年以上に及ぶ森友騒動のごく初期の段階で火が付いた問題だった。その扱いや活動範囲等について議論を深めることは、これからの時代の新しいファーストレディの在り方という点で必要ではあった。

だが朝日新聞は、単に「昭恵が悪い」「その昭恵を管理できない総理が悪い」「森友でも夫人の言動によって何かが動いたのではないか」式に叩くばかりで、議論を深める気などさらさらなかった。

 

■「家庭内野党」は支持


そもそも脱原発や防潮堤反対などの「家庭内野党」的スタンスを持ち上げていたのは、他でもない、朝日新聞である。むしろ、安倍総理を支持する層は、「昭恵さんを自由にさせていて大丈夫なのか」と苦言を呈していたくらいだ。


朝日新聞は〈原発輸出、首相の妻「心痛む」 講演で「私は家庭内野党」〉(2013年6月11日)という記事に続いて、2014年1月8日には、〈「家庭内野党」か、夫の「理解者」か 安倍昭恵・首相夫人に聞く〉という昭恵氏の1700字を超えるインタビューを掲載。


〈昭恵さんは2006〜07年の第一次政権では「自分らしさがなかった」と振り返る。その後、地元・山口で稲作に挑戦したり、都内に居酒屋をオープンしたりといった試みを始めた。
 政権は原発再稼働に前向きだが、昭恵さんは「事故が起きると影響が大きい」と否定的で、再生可能エネルギーの新技術を研究する施設を新設するよう首相に提案した。講演では「私は家庭内野党」と語り、政権の原発輸出に苦言を呈す〉


「首相との役割分担」という主なコメントを取り上げる欄でも、こんな昭恵氏の談話を紹介している。


〈主人には理想的なこの国のビジョンがある。「家庭内野党」と言うが、役割分担のようなもの。主人の意見に反発する人もたくさんいるが、そういう人たちと、どうネットワークをつないでいくかだ〉


自分の夫を袋叩きにする報道を展開してきた朝日新聞が、自分の意見を肯定的に紹介してくれる。私と夫の関係や、表からでは見えない夫の一面を紹介することで、夫を嫌いな人にもいい印象や影響を与えられるかもしれない――。


朝日だけでなく、『週刊朝日』など週刊誌がこぞって昭恵氏を取り上げたことで、昭恵氏がこのように思ったとしても不思議はない。一部には批判があろうとも、自分が積極的に動くことで、「夫の意見に反発する人ともネットワークを作っていく」ことの実感も抱いたに違いない。 

しかし昭恵氏の望みは打ち砕かれる。昭恵氏にについて肯定的な報道をするのは、朝日にとっては「安倍総理批判」ができる場合、という条件付きだったのだ。

 

■「昭恵叩き」社説40本!


2017年2月に森友学園問題で昭恵氏の「関与」が浮上して以降、連日、「昭恵」「昭恵」と見出しを打ったのはご存じのとおり。中でも驚くべきは社説だ。この14カ月余りで、「昭恵」という単語が含まれる朝日の社説は、実に40本に上る(2018年3月26日現在)。

朝日新聞は「安倍叩きを社是としたことはない」としているが、社説でここまで執拗に昭恵氏を取り上げている以上、「昭恵叩き」は社論と言われても仕方がないのではないか。


●2017年3月7日社説「安倍昭恵氏 公的立場の説明責任を」
〈公的立場にある者として、昭恵氏には「私人」を盾にすることなく、国民が納得できる説明をする責任がある〉
●同年3月24日社説「籠池氏の喚問 昭恵氏の招致が必要だ」
〈もちろん、籠池氏の一連の証言が事実だとは限らない。解明するには、昭恵氏本人の公の場での証言が不可欠だ〉
●同年3月25日社説「森友学園問題 説得力ない首相の説明」
〈昭恵氏も自ら国会で説明すべきである〉
●同年4月8日社説「『首相夫人付』 誰のための奉仕者か」
〈まず昭恵氏が説明責任を果たすことが、その第一歩だ〉
●同年5月12日社説「森友学園問題 昭恵氏に聞きたいこと」
〈昭恵氏本人が説明し、疑惑が解明されない限り、追及は終わらない〉
●同年6月21日社説「加計、森友問題 疑惑の全容を解明せよ」
〈学園が強制捜査を受けた今、昭恵氏は説明責任を果たすべきだ〉
●同年8月1日社説「籠池夫妻逮捕 国有地問題を忘れるな」
〈昭恵氏の招致を含め、国会は独自に事実関係を明らかにするために動き出すべきだ〉
●同年8月23日社説「森友学園問題 これで適正な処理か」
〈学園の小学校の名誉校長を務めた首相の妻の昭恵氏らを招致すべき〉
●同年9月21日社説「森友・加計 どこが「小さな問題」か」
〈真相解明の鍵を握るとみられながら口を閉ざしたままの人がまだまだいる。(中略)森友学園の小学校の名誉校長を引き受け、講演もしてきた首相の妻昭恵氏らだ。国会で話を聴く必要がある〉
●同年10月12日社説「衆院選 安倍首相 説明になっていない」
〈事実関係の解明にはやはり、昭恵氏自身が語るべきだ〉
●2018年1月31日社説「『森友』論戦 かわす政権、募る不信」
〈首相はこれまで「(昭恵氏については)私がすべて知る立場だ」と、昭恵氏に対する国会招致要求を拒んできた。あの発言は何だったのか〉
●同年3月13日社説「財務省の文書改ざん 民主主義の根幹が壊れる」
〈佐川氏と昭恵氏の国会招致が欠かせないのは言うまでもない〉
●同年3月15日社説「『森友』問題 与党は責任を自覚せよ」
〈国有地売却問題では、昭恵氏自身はもちろん、首相夫人付として学園や財務省との連絡役をつとめた政府職員からも、話を聴く必要がある。〉


ここまでくるともはや呪詛に近い。

 

■「事実の解明よりも倒閣」


何より、籠池氏本人が証人喚問の場で「昭恵夫人に口利きはしてもらっていない」と述べている。教育理念に共鳴して講演に訪れ、名誉校長を引き受けはしたが、土地購入までの経緯を詳述した財務省の「改竄前決裁文書」でも昭恵氏の交渉への直接の影響は読み取れない。


あれだけ詳細な交渉記録が出てきたのに、交渉の場にいたこともない昭恵氏が、交渉の何を知っているというのか。


朝日がこうまで「国会招致」を求めるのは、全容解明のためなどではない。「私や妻がかかわっていたら、総理も議員も辞める」と述べた安倍総理の言葉をとらまえて、「一言もでも昭恵夫人が『関与』を臭わせれば安倍を討てる」とする、ただそれだけの目的である。そしてそれは野党の思惑とも一致する。


「事実の解明よりも倒閣」という新聞に、報道機関としての資格はない。野党にも野党たる資格はない。


2018年3月2日、朝日が「スクープ」した財務省文書改竄で、森友問題は息を吹き返した。これによって朝日新聞は再び「昭恵氏を国会へ」との「社論」を前面に出すようになった。


3月15日、昭恵氏が経営する飲食店に昭恵氏を脅迫するはがきが届いた。翌26日に産経と読売は記事にしたが、朝日は黙殺。22日に再度、今度は安倍総理と昭恵氏を脅迫するはがきが届き、朝日新聞は3月14日になってようやく記事にした。脅迫を行った人物は、「朝日の記事に触発されて脅迫文を送った」可能性さえある。

朝日新聞は、以前「ジャーナリズム宣言」と題する販促キャンペーンで、こんなコピーを使った。

「言葉は感情的で、残酷で、ときに無力だ。それでも私たちは信じている、言葉のチカラを」

感情的で残酷な「昭恵叩き」はもうやめるべきだろう。「言葉のチカラ」を信じているのなら。

月刊『Hanada』セレクション『財務省「文書改竄」報道と朝日新聞 誤報・虚報全史』より)


著者略歴

  1. 岩瀬朗

    早稲田大学文学部中退。週刊誌記者を経てフリーライター。

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