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有本香の「香論乙駁」

朝日新聞さん、その手は古すぎませんか

月刊Hanada2018年9月号』より

■「選挙の顔」なるアホな言葉

選挙の顔──。よく聞く言葉だが、こんなアホな言葉もない。思えばこの20年、「〇〇(人名)では選挙が戦えないから……」と尤もらしく言っては、自民党も他の党派も、党首のクビをコロコロすげ替えてきた。

マスメディアが報じる支持率なるものが下がってくると、党員や地方組織から「これでは次の選挙勝てません」という声が上がり始め(たとされ)、では新しい「顔」を選ばなければ、となる。つまり、メディア様のオボエめでたき「顔」を次々に担ぎ上げることが半ば宿命付けられ、下ろしては担ぎ上げ、のたびに「政局」なるドタバタが起き、それをまたメディアが報じ……。結局、オイシイ思いをするのはメディアだけ、というくだらないマッチポンプが延々繰り返されてきたのだ。

こうして長らく、マスメディアとそこに頻繁に出る人々が「キングメーカー」となってきた。実際、田原総一朗氏のように、「僕は首相を3人失脚させたんだけど、僕のところに圧力なんて何にもない」と嘯く人もいて、なるほど、戦後最強の権力はマスメディアだったのだなあ、とあらためて実感するのである。

そこそこ見栄えよく、芝居ができて、メディア様に逆らわない。それだけの人が、あれよあれよという間に権力者になる国。情けないが、それが日本だ。だから、自分もあやかろうと国会の議場で泣きをする者、やたらとメディアに出て中身のない「党内野党」役を演じ続ける者も出る始末である。

この強固なアンシャン・レジーム(古い体制)を壊しかねない存在が安倍晋三だ。

いやいや、安倍首相はマスメディアのトップたちと会食している、メディアと懇ろではないか、という人があるだろうが、それは違う。現に、大新聞も全国ネットのテレビも、暇さえあれば根拠薄弱な安倍叩きを展開している。トップとの会食はほとんど効果なしだ。

メディア業界には、経営者が「制作現場」に口を出さないのを「粋」だとする風土がある。だが、数字にはウルサイ。しかも、最近はコストにもウルサイ。さらに、クレームにも過敏だ。となると、俄然、政治ネタが持て囃される。クレームを気にせず、安心して叩けて、安上がりで、それなりに数字が取れる。小学校のホームルームレベルの正義感を振りかざしていればオーケーだから、書き手、話し手は誰でもいい。テレビなら、雛壇タレントで事足りる。そんなイージーなネタが「政治」で、そのなかでも安倍叩きは鉄板ネタだ。

アンシャン・レジーム側であるメディアが5年半、新聞とテレビの連携プレーで叩きまくってきたが、安倍政権を倒せないでいる。こんなことはいままでなかった。とくに、レジームの頂点に君臨し、安倍首相と長きにわたって「抗争」を繰り広げてきた朝日新聞にしてみれば、かつて破壊力抜群だった自社の威力が何分の一にも減じられている現状は、さぞや悔しかろう。

■安倍vs朝日新聞の長き歴史

ここで、安倍vs朝日新聞の長き歴史、その始まりに近いと思しき一例を、古い新聞紙面から振り返って見てみよう。

平成13年(2001年)2月11日、いまから17年前の紀元節、日曜日の全国紙朝刊を見ると、全紙が、前日に起きた「えひめ丸」の事故を一面トップで報じている。何の過失もない日本の高校生と引率教員らがハワイの海に沈んだ、非常に痛ましい事故だった。

この事故の報道で、朝日新聞は最も痛烈に、日本の森政権の対応を報じている。〈森首相 一報後もゴルフを続行 官邸で指揮、四時間後〉という見出しである。この朝日の一面報道が号令となり、その後は連日、テレビで怒濤のごとく、「ゴルフをしていた森、けしからん」報道が続いた。

この時の真相を森氏に訊いてみると、当時の印象とはまったく異なる「真実」が見えてくるのだが、それとは別に、この日の朝日の一面にはもう一つ、注目すべき記述がある。当時、官房副長官の一人だった安倍晋三の名前があるのだ。天下の朝日が相手するほどの存在でないはずの若手政治家の名がこの日、一面含め複数回、書かれている。安倍vs朝日の長い戦いは、この頃始まっていたのだ。

いま、朝日新聞とテレビ各局が、この時のやり方をなぞるように安倍叩きをしている。「西日本豪雨の発災日に『赤坂自民亭』なる集まりでビールを飲んでいた、けしからん」というストーリーだ。何の番組かは知らないが、上田晋也という芸人さんが「昔、えひめ丸の事故ってあったじゃないですか。あれと一緒だと思うんですよ」と真面目な顔で喋っている映像をたまたまチラ見したが、何やら「あの時の夢よ、もう一度」という底意の滲んだ台本の一行のように聞こえたのは気のせいか。

朝日新聞さんと上田さんに、老婆心ながら申し上げたい。貴殿方のそのビジネスモデル、もはや古すぎませんか、と。

 

月刊Hanada2018年10月号』では、当連載のほか、

「石破茂は小池百合子そっくり」もご寄稿いただいております。お見逃しなく!

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著者略歴

  1. 有本香

    ジャーナリスト 1962年生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経験したのち独立。現在は編集・企画会社を経営するかたわら、世界中を取材し、チベット・ウイグル問題、日中関係、日本の国内政治をテーマに執筆。ネットメディア「真相深入り! 虎ノ門ニュース」、ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy Up」レギュラーコメンテーター。著書に、『「小池劇場」が日本を滅ぼす」(幻冬舎)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす―日中関係とプロパガンダ』(石平氏と共著、産経新聞出版)など。

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