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書評:木村光彦『日本統治下の朝鮮―統計と実証研究は何を語るか』

木村光彦『日本統治下の朝鮮 - 統計と実証研究は何を語るか (中公新書 2482)

 

著者がソウルで観た高校生向け教育番組で、高名な歴史学者が日本統治時代を「世界の植民地支配の中でも最悪」と断じたという。一方、日本の研究も「結論ありき」。これに著者が疑問を持ち、専門である経済に絞り、分析したのが〈実証主義に徹した朝鮮論〉である本書だ。

韓国の歴史教科書には、日本統治時代の一人当たり米消費量は「激減した」とあるが、これは総督府の統計の欠陥によるものであると指摘。 「日本統治による朝鮮半島の貧困化」は、統計からは1940年までは見られない。

注目は北朝鮮に関する記述だ。周囲に脅威を振りまく北の核開発技術は、旧ソ連の技術者由来であることはよく知られている。だが、その下地は統治時代に作られていた。統治時代に北朝鮮内に多く建設された重化学工業設備である。詳細は本書をお読み頂きたいが、この「遺産」が、延いては現在の北朝鮮の核開発に繋がったのだ。

さらには、〈戦時期に帝国日本の一部軍人・官僚が目指した経済体制の変革が、戦後、金日成の手によって実現〉とも。なんとも因果な話ではないだろうか。

数字は嘘をつかない。「結論ありき」の日本国内の論者はもちろん、韓国・北朝鮮の方にもお読みいただきたい一冊だ。
 
中央公論新社 864円(税込)

 

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  1. 編集部

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