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有本香の「香論乙駁」

小池百合子さん、五輪まで800日を切りましたが

月刊Hanada2018年8月号』より

■「だから言わんこっちゃない」

2020年東京五輪・パラリンピックまで800日を切った。本来なら、準備の最終段階に入ろうかというタイミングだが、雲行きが怪しい。これひとえに、わが東京の都知事、小池百合子氏の失政のせいである。

だから言わんこっちゃない――。1年半ほど前から、ずっと小池都政を批判し続けてきた私の現在の偽らざる気持ちはこれである。

いまとなってもまだ、五輪大会期間に使用される車両4000台の駐車場が確保できていない。大会期間中、選手村とスタジアムを結ぶ専用道路となるはずだった環状2号線の五輪前の開通は不可能となり、その影響で輸送ルートの確定もままならず、警備の計画にも遅れが出ている。過去に、アテネやリオでの五輪準備の遅れのニュースを聞いて、「日本ならあり得ないのにねえ」と嗤っていた、そんな悪夢のごとき状況が、わが事となっている。

すべては、小池知事がただただ己の政争のために、後先考えず、一昨年11月に予定されていた築地市場の豊洲への移転を「立ち止まった」ために引き起こされた事態だ。現在は一応、今年10月に築地市場が豊洲へ移る予定ではあるが、仮に引っ越しが予定どおり完了し、その後、現場がいかにシャカリキになろうとも、2年の遅れは取り戻せない。

事情に明るくない全国の読者の皆様にいま一度、説明すると、「盛土」だ、地下水のベンゼンだ、石原慎太郎氏が、都議会のドンが……と連日、テレビが大騒ぎした豊洲市場の「問題」「疑惑」は、すべて虚構だったのだ。  大山鳴動して鼠一匹、とはまさにこのこと。小池・マスメディアの連合軍が、半年以上もの間、大騒ぎして追及ごっこをしたものの、石原氏もその側近らも皆、潔白だったのだ。

これに対し、小池百合子氏の都政の罪深さはどうだろう。業者への補償、空っぽの豊洲市場の維持費と本来必要なかった築地の維持費、これらだけで数百億円。さらに環状2号線の開通遅れをカバーするための五輪用暫定道路の整備費はいくらかかるかわからず、この「遅延」によって発生した五輪までの突貫工事の費用を概算すると、ゆうに数千億円のムダ金が公金から支出されると予想される。

こうした状況を招いた小池知事に対し、大バッシングが起きても不思議でない事態だが、マスメディアは意外なほど静かだ。

■メディアが「小池スルー」、2つの理由

その第一の理由は、メディアはすでに「小池百合子」という素材に飽きたことにある。小池では数字が稼げなくなったからと言い換えてもいい。昨年の総選挙で、国政に色気を出して大敗し、都政でも何ら成果を出せない小池氏に、もはや視聴者は興味を示さない。

第二の理由は、メディア自身の「罪」の隠蔽である。小池百合子という空疎な政治家をあたかも「ジャンヌ・ダルク」のように持ち上げ、ありもしない「不正」や「疑惑」を言い立てて不毛な政治闘争を煽り、都政と五輪準備を遅滞混乱させたメディアの罪。そのなかには、「報道は事実をまげないですること」という放送法4条の一文に反したと思しき事例がいくつも見られた。こうした自分たちの罪を糊塗するためのいまの「小池スルー」なのだ。

そんななか、小池百合子氏の学歴詐称疑惑が再浮上した。「カイロ大学首席卒業」という小池氏の学歴への疑惑は、これまで何度も浮上している。小池氏が自民党へ入党した直後、さらに都知事選の最中にも問題視されたが、いずれも否定され、深掘りされなかった。

しかし、今般の『文藝春秋』(2018年7月号)掲載の石井妙子氏の記事は、極めて綿密な取材に基づいていることがわかる内容だ。定例会見でこの件を問われた知事は、次のように答えた。 「『卒業証書も有り、大学側も認めている』と改めて否定した。ただ、自身の著書などで『首席で卒業』としていた点については『先生から「良い成績だった」と言われた。昔の話なので一つ一つは覚えていない』と明言を避けた」(時事、2018年6月15日)

先生から「良い成績だった」と言われたことと首席卒業は明らかに違う。そして仮に、小池氏の学歴経歴が石井氏の書いたとおりのことだとしたら、前代未聞、四半世紀以上にわたる公職選挙法違反に問われる事態ともなり得る。これほど重大な「疑惑」はない。いまこそ、大メディアの出番ではないのか。

実は小池氏の学歴詐称疑惑に関する情報は私のもとにも寄せられていた。最近、『文春』以外の週刊誌が取材に動いたこともあるが、石井氏ほどの綿密な深追いは誰もできなかった。過去の都政を「ブラックボックス」と非難し、都政の「透明化」を掲げて政敵を倒してきたヒロインは、自身の過去という「ブラックボックス」とどう向き合うのか。

私たちの手で、小池劇場第二幕をこじ開けるときが来たのかもしれない。

 

月刊Hanada2018年9月号』では、有本さんが櫻井よしこさんとの対談で、小池都政の「ブラックボックス」に迫っています。合わせてお読みください!!

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著者略歴

  1. 有本香

    ジャーナリスト 1962年生まれ。東京外国語大学卒業。旅行雑誌編集長、上場企業の広報担当を経験したのち独立。現在は編集・企画会社を経営するかたわら、世界中を取材し、チベット・ウイグル問題、日中関係、日本の国内政治をテーマに執筆。ネットメディア「真相深入り! 虎ノ門ニュース」、ニッポン放送「飯田浩二のOK! Cozy Up」レギュラーコメンテーター。著書に、『「小池劇場」が日本を滅ぼす」(幻冬舎)、『リベラルの中国認識が日本を滅ぼす―日中関係とプロパガンダ』(石平氏と共著、産経新聞出版)など。

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